東洋館 8室
2015年12月1日(火) ~ 2016年1月31日(日)
唐(618~907年)は、王羲之(おうぎし)が活躍した東晋(317~420年)とともに、中国の歴史上、書がもっとも高い水準に到達しました。唐時代の書は、栄華を極めた唐文化を象徴するかのように、東晋の書を継承しつつも、東晋とは異なる美しさが追求されました。唐時代に完成された楷書がいかに完成したものであったかは、その後新たな書体が出現しなかったことからも、容易に理解されるでしょう。
唐の太宗皇帝は王羲之の書を崇拝したため、王羲之の格調高い書風は朝野に浸透しました。唐の四大家と称される欧陽詢(おうようじゅん)、虞世南(ぐせいなん)、褚遂良(ちょすいりょう)、顔真卿(がんしんけい)は、王羲之の書法に基づきながら、唐の洗練された気風を盛り込みました。四大家によって確立された美しい楷書は、今も多くの人たちに学ばれ続けています。
2015年は、顔真卿(709~785)の没後1230年にあたります。顔真卿は、伝統的な書法に立脚しながら、蚕頭燕尾(さんとうえんび)という独特の筆法によって力強く親しみやすい楷書を創出し、行書や草書においても数々の傑作をのこしています。唐時代の後半には、伝統的な書法から逸脱した書風も妍(けん)を競いあい、異彩を放つ名品は枚挙に遑(いとま)がありません。
このたび13回目を迎える台東区立書道博物館との連携企画では、顔真卿をはじめとした唐の名家の拓本や、敦煌から出土した当代随一の写経生による気品高い宮廷写経、民間で書写された典籍の肉筆など、書が最高峰に到達した唐時代の美しい優品を紹介します。