東洋館 8室
2013年12月3日(火) ~ 2014年2月2日(日)
中国の歴史上、唐時代は東晋時代とともに、書法が最も高い水準に到達しました。唐時代の書の特質は、王羲之の活躍以来、長年をかけて培われてきた書法を整理し、法則化した点にあります。唐の四大家と並称される虞世南(ぐせいなん)・欧陽詢(おうようじゅん)・褚遂良(ちょすいりょう)・顔真卿(がんしんけい、709~785)らの作品は、今でも書の古典として学ばれ続けています。なかでも顔真卿は、伝統的な書法に立脚しながら、蚕頭燕尾(さんとうえんび)と称される独特の筆法によって、多くの人に親しみやすい書風を創出し、後世に多大な影響を与えました。
唐時代までの貴族文化に代わって、宋時代には科挙の試験に及第した士大夫(したいふ)が学問芸術を担うようになり、書の表現も大きく変化します。宋時代の書の特質は、個性を重んじ、人間性を高らかに謳い上げるような表現にあります。宋の四大家のうち、蘇軾(そしょく)・黄庭堅(こうていけん)・米芾(べいふつ)は卓越した活躍を見せますが、彼らに先立ち、宋時代の書の方向を決めた人物が蔡襄(さいじょう、1012~1067)でした。蔡襄は伝統的な書法を引き継ぎ、とりわけ顔真卿の影響を強く受けながら、唐末五代と北宋の架け橋として、大きな役割を果たしたのです。
今回は台東区立書道博物館の名品である顔真卿「楷書自書告身帖(かいしょじしょこくしんじょう)」と、蔡襄の「楷書謝賜御書詩表巻(かいしょしゃしぎょしょしひょうかん)」を中心に据え、唐時代と宋時代の書の特質を探ります。