本館 特別1室
2012年3月27日(火) ~ 2012年4月22日(日)
東京国立博物館140周年を記念して、約100年前の東京帝室博物館における博物館活動の一面をご紹介します。
当館には、江戸時代の女性が用いた小袖や振袖、帯などの服飾品を原寸大で描いた模写図37件が保管されています。その描写は、生地の地紋や刺繍の糸目、鹿の子(かのこ)絞りの粒までもが描き込まれ、驚くほど詳細です。これらの模写図がいったい何のために描かれたのか、これまで詳しいことはわかっていませんでした。
近年の調査によって、これらの模写図が明治四十四年(1911)、東京帝室博物館で開催された特別展覧会「徳川時代婦人風俗ニ関スル絵画及服飾器具(徳川時代ふじんふうぞくにかんするかいがおよびふくしょくきぐ)」に際して制作されたものであることが明らかになりました。展覧会のために各所からお借りしてきた服飾品を“後世の研究進展のために”模写したものであることが明らかになったのです。また、この時同様の経緯でモノクロームのガラス乾板写真も撮影されていました。展示された服飾品の多くは、今では所在不明となっており、模写図やガラス乾板写真が、失われた原品の情報を伝える唯一の資料といえるものも少なくありません。
本展示では、小袖・振袖の模写図を中心に原品振袖や絵画、ガラス乾板写真のパネルなどを展示し、明治四十四年特別展覧会の様子を一部再現いたします。当時の博物館員が後世に残した贈り物を受け止めて頂けましたら幸いです。