国宝 善無畏像(部分)
平安時代・11世紀 兵庫・一乗寺蔵
本館 2室
2024年6月11日(火) ~ 2024年7月7日(日)
善無畏(ぜんむい)は、7世紀後半から8世紀初めに活躍したインド出身の高僧です。中国・唐の都、長安に密教を伝え、当時皇帝であった玄宗(げんそう)から国師(こくし)として敬われました。密教の根本経典の一つである『大日経(だいにちきょう)』は、善無畏と弟子の一行(いちぎょう)がサンスクリットの原典から漢訳(かんやく)したものです。
善無畏は画面向かって右を向き、両手で経巻(きょうかん)を捧げ持ち、片膝を立てて椅子に座った姿で描かれます。赤い衣が印象的ですが、袈裟(けさ)部分のグラデーションや、袴(はかま)に見られる七宝(しっぽう)つなぎの文様も赤色がベースになっています。暖色を主とした彩色が、顔貌(がんぼう)や衣文(えもん)に見られる伸びやかな曲線と相俟(あいま)って、華やかさとやわらかな雰囲気を生み出しています。椅子の前には右手に剣、左手に宝塔を持つ毘沙門天(びしゃもんてん)と水瓶(すいびょう)が表されます。毘沙門天の顔貌に見られる描線は細やかで、善無畏の衣に見られる文様と同様、精緻な表現も見ることができます。本作品は、インド・中国・日本における天台宗の高僧と聖徳太子を描いた十幅の肖像のうちの一つです。密教に関わる善無畏が入っているのは、日本の天台宗において密教が重視されたためでしょう。十一世紀の肖像画として大変貴重な作例です。
指定 | 名称 | 員数 | 作者・出土・伝来 | 時代・年代世紀 | 所蔵者・寄贈者・列品番号 | 備考 | |
おすすめ | 国宝 | 善無畏像 | 1幅 | 平安時代・11世紀 | 兵庫・一乗寺蔵 |