口つくりは繰口【くりぐち】、肩に紐線【ちゅうせん】1条をめぐらす。胴には州浜【すはま】に屈曲の多い枝ぶりの松樹を繊細な調子で鋳出す。真形【しんなり】の端正な姿、鯰肌【なまずはだ】ともいわれる光沢のある茶褐色の肌あい、勇勁な鬼面鐶付【きめんかんつき】など芦屋釜の特色をよく示す、わが国茶の湯釜の代表作の一つである。
筑前(ちくぜん)国芦屋(あしや)(現在の福岡県芦屋町周辺)で作られた鉄製の茶釜(ちゃがま)は、「芦屋釜(あしやがま)」として珍重されました。真形とは、内反(うちぞ)りした繰口(くりぐち)、丸い形の胴、肩の鐶付(かんつき)など、茶釜としての最も基本的な形式という意味です。本品は、胴に優雅な松と浜辺が表された、芦屋釜を代表する優品です。