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伊藤若冲「乗興舟」 版画で楽しむ淀川の旅

現在、本館2階のD・E室(旧特別1室・2室)では特別企画「アイルランド チェスター・ビーティー・コレクション 絵巻と絵本のたからばこ」を開催しています(会期:~7月20日(月・祝)まで)。

アイルランドの首都ダブリンにあるチェスター・ビーティーが所蔵する、珠玉の絵巻・絵本コレクションを紹介するこの展示。みどころはたくさんありますが、今回はE室に展示している伊藤若冲「乗興舟(じょうきょうしゅう)」をご紹介します。

 「乗興舟」は、「奇想の画家」として知られる伊藤若冲(1716~1800)が制作した版画巻で、京都から大坂まで、淀川を下る船旅の景色が描かれています。明和4年(1767)の春、若冲は相国寺の禅僧、大典(だいてん)(梅荘顕常(ばいそうけんじょう)1719~1801)とともに淀川を下りました。本作は、その経験をもとに制作されたものです。
 
大きな特徴は、「拓版画」という技法でつくられていること。木版正面摺とも呼ばれ、図や文字を彫った木版のうえに湿らせた紙を押し当て、凸部分にのみ墨を載せていく版画の技法です。たとえば、十円玉に紙を載せて、鉛筆でこすると図柄が浮かび上がってきます。それとよく似た仕組みといえばイメージしやすいでしょうか。「乗興舟」では、墨一色で川や山、舟や人々が表されています。ところどころにグラデーションが施され、幻想的で奥行きのある画面が展開されます。
それでは画巻をみていきましょう。船は京都の伏見から出発します。
 
 
乗興舟(部分) 伊藤若冲筆 江戸時代・明和4年(1767)頃 チェスター・ビーティー蔵
Images courtesy of the Trustees of the Chester Beatty Library, Dublin.
 
左下には淀城が見えます。
 
 
 
京都の橋本付近。空に一羽の鳥が飛んでいます。
 
 
 
枚方(ひらかた)を過ぎたあたり。川はどこまでもつづいていくようです。
 
 
 
河畔に家々が立ち並びます。画面右手には一杯やれる店を探しているらしい旅人の姿も。
 
 
 
最後に、船は大坂の八軒家に到着します。天満橋が架かり、その下に多くの船が停泊しています。
 

この作品は、絵の部分だけで10枚の紙をつないで構成されています。その全長は1150.0センチメートル。当館の展示ケースに合わせてつくられたかのようなサイズで、実際、展示作業中に展示台へぴたりと収まったときには、担当者一同、思わずにんまりとしてしまいました。


展示風景
 
さて、江戸時代、淀川には京都と大坂を結ぶ三十石船が昼夜運行していました。この船に乗って人々が行き交う淀川の風景は、当時の浮世絵にもたびたび描かれています。現在、本館20室「日本美術の流れ 浮世絵と衣装―江戸(浮世絵)」では、今回ご紹介した広重と北斎の浮世絵を含め、淀川をはじめとする川の風景をテーマとした作品を展示しています。 

こちらは歌川広重が描いた三十石船です。老若男女が乗り合わせた船に、飲食物を売る「くらわんか舟」が近づく様子が描かれています。

京都名所之内 淀川 歌川広重筆 江戸時代・19世紀 東京国立博物館蔵
展示期間:2026年5月12日(火) ~ 2026年6月14日(日)
 
こちらは葛飾北斎が描いた淀川風景です。淀城のそばを三十石船が進み、岸辺では上り船を人力で曳く様子もみられます。
 
雪月花・淀川 葛飾北斎筆 江戸時代・19世紀 東京国立博物館蔵
展示期間:2026年5月12日(火) ~ 2026年6月14日(日)
 
チェスター・ビーティー展をご堪能いただいたあとは、ぜひ本館2階の20室にもお立ち寄りください。若冲、そして広重や北斎、さまざまな絵師がとらえた淀川の表情を、版画作品を通してお楽しみいただければ幸いです。
 

カテゴリ:研究員のイチオシ特別企画

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posted by 村瀬 可奈(日本絵画) at 2026年05月27日 (水)

 

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