本館 14室
2015年10月6日(火) ~ 2015年12月13日(日)
刀剣を収める鞘(さや)や柄(つか)をまとめて「刀装(とうそう)(拵(こしらえ))」といい、そのうち鐔(つば)や目貫(めぬき)、笄(こうがい)などの金具を「刀装具」と呼びます。室町時代、刀装具の名工として後藤祐乗(ごとうゆうじょう、1440~1511)があらわれ、その子孫は足利氏、豊臣氏、徳川氏に仕え、多くの分家も生まれて一派は大いに栄えました。後藤一乗(ごとういちじょう)は、寛政3年(1791)、京都の分家のひとつ七郎右衛門(しちろうえもん)家に生まれ、朝廷や幕府から重用された名工として知られており、明治9年(1876)京都で没しています。
後藤家の刀装具は、素材に赤銅(しゃくどう、銅と少量の金の合金)を用い、龍や獅子の文様が多いなど、一定した表現がみられ、この表現や作品は「家彫(いえぼり)」と呼ばれています。家彫は一般的に端正な印象を与えますが、一乗はこうした伝統的な作風を保ちつつ、一派ではあまり用いない素材や技法を用いることで新たな作風を開拓しました。
この特集では、一乗の初期から晩年にかけての刀装具や一乗の弟子たちによる作品をはじめ、孝明天皇のために製作されたと考えられる刀装やその際に描かれた絵図もあわせて展示します。なかでも、これらの精緻な絵図は刀装が朝廷で同じく御用を務めていた絵師との合作であったことを示す貴重な資料です。幕末に生まれた刀装、刀装具の、気品と華やかさに満ちた世界をご覧下さい。