2013年7月17日(水)、東京都美術館にて「日本美術の祭典」の報道発表会を行いました。
壮大なタイトル!
でも、なぜ東京都美術館(以下トビカン)で報道発表会?!
それは、トビカンとトーハクの初コラボレーションが来春実現するからです。
「日本美術の祭典」ポスター
トーハクでは、「クリーブランド美術館展―名画でたどる日本の美」(2014年1月15日(水)~2月23日(日) 平成館特別展示室第1・2室)と、
日本伝統工芸展60回記念「人間国宝展―生み出された美、伝えゆくわざ―」(同期間 平成館特別展示室第3・4室)を開催します。
そしてトビカンでは、日本美術院再興100年 特別展「世紀の日本画」(2014年1月25日(土)~4月1日(火))を開催します。
両館ともテーマが「日本美術」、そしてほぼ同時期の開催ということで、3つの展覧会をご覧いただき、古代から近代にかけての美意識を一連で感じていただきたいという思いで、このプロジェクトが立ち上がりました。
主催者を代表して当館副館長 島谷弘幸は、
「今まで当館にいらしたことのない方も、この機会にぜひ両館に足をお運びいただけるよう、一体となってプロジェクトを盛り上げて行きたい」と、意気込みを語りました。
(左から)東京国立博物館 島谷弘幸副館長、東京都美術館 真室佳武館長、公益財団法人日本工芸会 室瀬和美副理事長、公益財団法人日本美術院 松尾敏男理事長
後半は、「日本美術の伝統と革新、そして未来へ」という題でパネルディスカッションが行われ、
特別展「世紀の日本画」監修の東京芸術大学 古田亮先生をコーディネーターに迎えて、熱い議論が繰り広げられました。
(左から)古田先生、島谷副館長、室瀬副理事長、日本美術院 田渕俊夫代表理事
そして!今回のコラボでの大注目は、「3展共通特別先行前売券」です!
3つの展覧会が見られて、なんと1000円!5000枚限定、8月1日(木)~9月30日(月)の期間限定の、スーパーお得前売券です。
(会期が前期・後期に分かれる特別展「世紀の日本画」は、前期・後期のいずれかお好きな方をご覧いただけます。)
※画像はイメージです。デザインや仕様は変更になる場合があります。
こんなにお得なチケットは、トーハク史上初です。
ぜひ展覧会公式ホームページをチェックしてみてください。売り切れ必至ですのでお早めにどうぞ。
今後は展覧会グッズなどのおみやげや、交通広告の展開などでもコラボしていく予定です。
3つの異なる視点で日本美術の楽しさを感じていただける「日本美術の祭典」。
内容の詳細は、これからこのブログでもご紹介していきます。どうぞご期待ください。
カテゴリ:news、2013年度の特別展
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posted by 小島佳(広報室) at 2013年07月19日 (金)
トーハクくんがゆく!「国宝 大神社展」 其の五(PG12の絵画篇)
ほほーい!ぼくトーハクくん!
今日は土屋研究員といっしょに「国宝 大神社展」を見に行くほ。
絵画について教えてくださいだほー!
こんにちはトーハクくん。今回は、絵画作品を紹介するね。
古神宝や神像の影にかくれがちだけど、絵画作品も奥が深くて見どころがたくさんあるんだよ。
土屋さん、今回のタイトルに「PG12の絵画」って書かれているのが気になるほ。
ぼくまだ5歳なんだけど大丈夫かなあ?
じゃあさっそく見に行こうか。
えっ、土屋さん、置いていかないでほ!
おすすめの作品はたくさんあるんだけど、今回は2作品を中心にお話します。
1つめはこちらです。
重要文化財 琴弾宮縁起絵(ことびきのみやえんぎえ)
鎌倉時代・14世紀 香川・観音寺蔵
香川県の琴弾八幡宮の草創縁起が描かれています。
そーそーえんぎ?
お宮がつくられた起源や由来、っていう意味だよ。
八幡大菩薩が、大分の宇佐八幡宮から京都に向かう途中でこの地に立ち寄られた、という伝承をもとに描かれたんだ。
八幡大菩薩さんが立ち寄ったの?どこに描かれているの?
左上のほうに、細く白い雲がたなびいているのが見えるかな?
この雲こそが、八幡大菩薩がこの地に降りたった様子を描いているんだよ。
「その雲は虹のようだった」と言われていて、この雲も虹みたいに見えるでしょ?
ほ~!お宮からけむりが出ているのかと思ったほ。
けむりじゃなくて、雲が空のほうから地におりてきているんだ。
神様の姿は直接は描かれないことが多いんだよ。
そっか!神様は目に見えないもんね!ちょっと面白いルールだほ。
少し下に目をうつすと、一艘の船が浜辺に寄せているのを、お坊さんたちがお迎えしている姿が見えます。
こういうひとつひとつに実は細かいエピソードがあるんだよ。(くわしくは図録270ページをご覧ください)
しかしすごいほ、ヘリコプターに乗って空から見ているみたいだほ。
これって元々、景色を楽しむためのものだったの?
おっ、いい質問だねトーハクくん。
楽しむというのとはちょっと違うんだ。
たとえば仏教美術には仏や菩薩の像が描かれているよね。神道美術では、「風景」が信仰の対象として描かれるんだよ。
社殿やそれを中心とした神域を描いた絵画を、家にかけて礼拝することで、実際にそこに行って礼拝したことと同じ効果があると考えられていたんだ。
なるほー!遠いところに住んでいたら、毎日は通えないもんねえ。こりゃ助かるほ。
では、もうひとつの作品を見てみましょう。
那智山宮曼荼羅(なちさんみやまんだら) 室町時代・16世紀 和歌山・熊野那智大社蔵
こちらは、那智大社を知らない人に向けて参詣にきてくださいって宣伝をするための絵。
熊野ってこんなところですよって紹介するガイドにもなっている、いわば「熊野攻略マップ」だね。
熊野比丘尼(くまのびくに)っていう尼僧たちが、この絵を折りたたんで諸国をめぐり歩き、さまざまな場所で絵解きをして、
熊野のPR活動や勧進(資金を集める)したそうだよ。
ほお!どうりで、みんな楽しそうにしていて、なんだか行ってみたい気持ちになるほ。
みんな楽しそう?よーく見て。みんなじゃないかもよ。
えっ、ごめんだほ、まだちゃんと見ていなかったほ。
何気ないところにも、熊野にまつわるエピソードが描かれているんだよ。
たとえば画面右下。
浜辺から船が3艘出ているね。これは「補陀落渡海(ふだらくとかい)」の様子なんだ。
当時は南の海の向こうに、観音様が住まう「補陀落浄土」というところがあると考えられていた。
それで、小型の木造船(右側の船)に行者が乗り込み、出られないように釘で屋根を打ちつけたうえで、そのまま沖に出てゆくというものだったんだ。
その後、伴走している船が沖まで曳いていって、綱を切って見送る。
場合によってはもともと船に穴を開けていて、その穴をふさいでいた栓を自分で抜いて沈めたりしたそうだよ。
ちょ、ちょ、ちょっと待ってだほ(汗)、それじゃ中に乗った人はどうなるほ?
浄土へ行くんだろうな…。
ふがぁ!そ、そんなことを実際にしていたほ?!
さあ今度は画面右上の滝の部分を見てみよう。
土屋くんっ、質問に答えていないほ!
これは滝に打たれて修行していた文覚上人(もんがくしょうにん)というお坊さんが気を失ってしまった場面。
不動明王に仕える矜羯羅童子(こんがらどうじ)と制多迦童子(せいたかどうじ)に助けられています。
この人は、出家する前のプライベートがちょっとワケアリなんだ。
彼は、とある人妻に恋をしてしまう。それで彼女の夫を殺そうと計画する。
お風呂から出てきた長髪の夫の首を掻き切ろうとするんだけど、実は殺したのは、身代わりになった愛する人だったんだ。
その罪をあがなうために出家し、那智の滝で荒行をしたとされています。
土屋くん。
なに?
その話、5歳のボクにはちょっとオトナすぎるほ。いけないほ!
いやいや、私が言いたいのは、この1枚の絵の中にはそれくらい濃いエピソードがたくさん詰まっているということだよ。
こうやって絵解きすることで、昔の人たちも熊野に興味をもって、いつかは参詣したいと思っていたと思うんだ。
トーハクくんも熊野や他の神社に行ってみたくなったでしょ?こういった絵画は、そんな役割も果たしていたんだよ。
なるほ!たしかに、神社に行って実物を見てみたくなったほ!この絵を見てから行ったほうがもっと楽しめそうだほ!
そして今も昔も、神社が日本人の暮らしと人生に深く関わっているようすがよく分かったほ。
土屋さん、シゲキ的なお話を有難うございました!
土屋研究員とトーハクくん。
土屋さんもそうですが、研究員という人種はきわどいエピソードを淡々と話す人が多いなと目まいがしたトーハクくんなのでした。
カテゴリ:研究員のイチオシ、news、2013年度の特別展
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posted by トーハクくん at 2013年05月24日 (金)
ほほーい!ぼくトーハクくん!
今日は丸山研究員といっしょに「国宝 大神社展」を見に行くほ。
シンゾーについて教えてもらうんだほー!
重要文化財 随身立像(厳成作 平安時代・応保2年(1162) 岡山・高野神社蔵)の前にて。
そうだよ。この展覧会の一番の見どころは神像なんだからね。
おわっ、丸山さん言い切ったほ!
神像の担当者がそう言って何が悪いのよ。
おおー!男気を感じるほ!
ではさっそく神像を見に行くほ!
うわぁ~、いろんな神様がずらりだほ!
しかし「神像」って初めて見たほ。「仏像」なら最近は若い女子にも人気があるみたいだし、ぼくも見たこともあるんだけど…
そうだよね。神像は元々見せるものではないから、通常は非公開のことが多いんだよ。
だからこれだけの多くの神像が一気に並ぶことは、本当に貴重なことだね。
そうか!よーく見ておかなきゃだほ!!
うーむ、神像ってなんだかふしぎ。いろんな形や表情をしているほ。
じつは、仏像の場合は「すべてを超越した存在」だから感情が表されることはないんだ。
でも神像は、ほほえんでいたり怒っていたり、感情が豊かに表されているよね。
にっこり。
童女立像 平安時代・12世紀 広島・南宮神社蔵
ぎろり。
重要文化財 男神坐像 平安時代・9世紀 京都・松尾大社蔵
おなやみ?
重要文化財 男神坐像 平安時代・12世紀 京都・大将軍八神社蔵
本当だ!みなさんとっても個性的だほ!
神像には規則や儀範、専門的にいうと「儀軌(ぎき)」がないんだよ。
仏像の場合は、「この像はこのポーズ、持ちものはこれ」というように、ビジュアルについてきちんと決まりごとがあるんだ。
神像はそういうものが無い分、作り手が自由に想像力をはたらかせてつくることが出来たんだろうね。
なるほ!だからみんなオリジナリティが溢れているんだね。
女神坐像 平安時代・10~11世紀 兵庫・伊弉諾神宮蔵
ぐはっ!大変だよ丸山さん、お背中に穴が開いちゃってるほ!!
まあ落ち着いてよトーハクくん。これはおそらく神木あるいは霊木でつくられているんだ。
レイボク?
たとえば雷が落ちた木には、不思議なパワーが備わっているように思えるよね。
人々はそういう木のなかに神を見出した。だから神像をつくって、大切に扱ってきたんだね。
ふむふむ。
そういう木は必ずしも彫刻をつくるのに適しているとは限らない。ウロもあれば節目もある。
でもその木をつかうことにこそ、意味があったんじゃないかな。
ほー!その話、どきどきするほ!
グレートな自然を尊敬する、昔の人の気持ちが伝わってくるようだほ!ぐっときたほ!
そうだね。
当時の人々もきっと、神に関する物語を聞いたりして、神のイメージを具体的に思い描いていたと思うんだ。
そのイメージを、ビジュアル化(目に見える形に)したくなる。それが人間ってもんなんだろうね。
深いっ、深いほ!そうやって神像を見てみると、心の距離が縮まったような気がするほ!
丸山さん、面白いお話を有難うございました!
丸山研究員とトーハクくん。女神坐像(平安時代・12世紀 広島・南宮神社蔵)の前にて。
神像も個性的だけど、丸山さんも個性的なひとだなあと思う、トーハクくんなのでした。
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posted by トーハクくん at 2013年05月17日 (金)
「国宝 大神社展」(4月9日(火)~6月2日(日)平成館 )は、
5月9日(木)午前、10万人目のお客様をお迎えしました。
多くのお客様にご来場いただき、心より御礼申し上げます。
10万人目のお客様は、岡山県よりお越しの真玉英子さんです。
記念品として、東京国立博物館長 銭谷眞美より、本展図録と展覧会オリジナルグッズの「ジンジャークッキー」等を贈呈いたしました。
「国宝 大神社展」10万人セレモニー
左から、真玉英子さん、銭谷眞美館長
5月9日(木)東京国立博物館 平成館エントランスにて
真玉さんは、初めてトーハクに来館されたとのこと。
「旅行をしたり、歴史のあるものを見るのが大好きです。今回の展覧会では、念願の七支刀が見られるということで、とても楽しみにしています」とお話いただきました。
「国宝 大神社展」は、会期終了まであと1ヶ月をきりました。
国宝 七支刀(古墳時代・4世紀 奈良・石上神宮蔵)をはじめ、
重要文化財 春日宮曼荼羅(鎌倉時代・13世紀 東京・根津美術館蔵)、
重要文化財 祇園社絵図(隆円筆 鎌倉時代・元徳3年(1331) 京都・八坂神社蔵)は5月12日(日)までの展示です。
どうぞお早めにご来館ください。心よりお待ちしております。
カテゴリ:news、2013年度の特別展
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posted by 小島佳(広報室) at 2013年05月09日 (木)
本日より「国宝 大神社展」も後期に入り、昨日は展示替えが行われました。
かなりの作品が入れ替わって、前期とはまるで別の展覧会のようです。具体的にどのあたりが替わったのかお伝えします。
まず「第1章 古神宝」では、広島・厳島神社、神奈川・鶴岡八幡宮、愛知・熱田神宮の古神宝がお目見えでございます。
国宝 沃懸地杏葉螺鈿太刀(いかけじぎょうようらでんのたち)
鎌倉時代・13世紀 神奈川・鶴岡八幡宮蔵
ハートの透かしが可愛い!と思ったら、これは猪目(いのめ)という文様なのだそう。細かな装飾に注目です。
重要文化財 表着 萌黄地小葵桐竹鳳凰模様二陪織物(うわぎ もえぎじこあおいきりたけほうおうもようふたえおりもの) 室町時代・15世紀 愛知・熱田神宮蔵
えっ、こんなにキレイな色なの?!と驚いてしまうほど。こちらの文様は天皇御料の束帯と同じなのだそう。ときめきます。
「第2章 祀りのはじまり」では、三重・神宮文庫の重文 古事記 上巻(室町時代・応永33年(1426)写)などが展示されます。
「第3章 神社の風景」では、奈良・春日大社や山口・防府天満宮の絵巻、滋賀・日吉大社や和歌山・熊野那智大社の曼荼羅などが展示されます。
重要文化財 松崎天神縁起絵巻 巻第六
鎌倉時代・応長元年(1311) 山口・防府天満宮蔵
神社創立の由来を、ビジュアルで伝えようとしたのですね。時を越えて、現代の私達が見ても分かりやすいです。
「第4章 祭りのにぎわい」では、岐阜(本巣市)・春日神社、山形・黒川能上座、広島・厳島神社の能装束などが展示されます。
重要文化財 狩衣 紺地白鷺葦模様(かりぎぬ こんじしらさぎあしもよう)
安土桃山時代・16世紀 岐阜(本巣市)・春日神社蔵
あまりの美しさに、ただただ立ち尽くしてしまう、そんな装束です。男女問わず、心をぐっと掴まれるはず!
重要文化財 豊国祭礼図屏風(ほうこくさいれいずびょうぶ)
狩野内膳筆 江戸時代・17世紀 京都・豊国神社蔵
秀吉の七回忌に催された豊国神社臨時祭礼を描いたもの。風流踊りが盛り上がっています!
ん??
えっ、なにこの人、たけのこ?コスプレ?目が本気だ…!(どこにいるか会場で探してみてください)
思い思いの個性的な格好で祭りを楽しむ様子を見ると、こちらまでわくわくしてきます。
「第5章 伝世の名品」では、青森・櫛引八幡宮、静岡・三嶋大社、京都・北野天満宮などの宝物が展示されます。
国宝 白糸妻取威鎧(しろいとつまどりおどしのよろい)
南北朝時代・14世紀 青森・櫛引八幡宮蔵
重ね着をした装束の裾先、つまり妻の部分が翻ったときの美しさを連想させることから付いた名だそう。ポエティック!
「第6章 神々の姿」では、石川・白山比咩神社や京都・仁和寺の神像絵画が展示されます(神像彫刻の展示替えはありません)。
いやはや、こんなに見どころがたくさんあるなんて、後期展示も見のがせません!
「国宝 大神社展」は6月2日(日)まで開催中です。どうぞお早めにご来館ください。
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posted by 小島佳(広報室) at 2013年05月08日 (水)