本館 9室
2010年3月9日(火) ~ 2010年5月16日(日)
江戸時代、歌舞伎は庶民の三大娯楽のひとつで、歌舞伎役者のファッションは女性たちの憧れの的でした。大奥 の女性にとっても歌舞伎は大きな楽しみのひとつでしたが、歌舞伎を見に行くことは禁じられていました。また、将軍の妻子、大名の奥方や息女が暮らす大奥に は男性である歌舞伎役者が出入りすることは容易ではありません。そこで、女性の歌舞伎役者「お狂言師(きょうげんし)」が大奥で歌舞伎を演じたのです。
東京国立博物館が所蔵する江戸時代後期の歌舞伎衣裳の多くは、三代目坂東三津五郎(ばんどうみつごろう)(1775~1831)に弟子入りしたお狂言 師・坂東三津江(ばんどうみつえ)が使用したものです。坂東三津江は、特に11代将軍・徳川家斉の側室・専行院(お美代の方)やその娘である溶姫、末姫に 贔屓にされました。その活躍ぶりは遺された華麗な衣装の数々からもうかがえます。
今回は桜の季節にちなんで、桜満開の道成寺を舞台とした演目『京鹿子娘道成寺(きょうがのこむすめどうじょうじ)』の衣装、姫を演じるときに着ける、桜 をデザインした振袖などを展示します。肉厚の刺繍が生み出す大胆な模様と鮮やかな色彩が奏でる、あでやかな世界をお楽しみください。