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根来塗-朱漆の美

  • 『朱漆湯桶 室町~安土桃山時代・16世紀(武吉道一氏寄贈)』の画像

    朱漆湯桶 室町~安土桃山時代・16世紀(武吉道一氏寄贈)

    本館 13室
    2007年6月12日(火) ~ 2007年9月17日(月・祝)

     中世の寺院や神社で用いられた調度や器には、朱漆(しゅうるし)を塗ったものが数多く見受けられます。このような古い朱漆塗の器物のことを「根来塗(ねごろぬり)」とよび慣わしています。鎌倉時代に高野山から紀伊国根来寺に移ってきた僧徒が、寺内で使用する漆器を制作したのが根来塗の始まり、という説がありますが、朱漆を塗った器物は平安時代には既に用いられていました。根来寺で制作された朱漆器が根来塗と称され、その名前が広まった結果、朱漆塗すべてが根来塗とよばれるようになったのでしょう。

      根来塗の多くは黒漆を塗った上に朱漆を塗り重ねており、長年使われたことによってところどころ朱漆が摩滅し、下に塗った黒漆が表面に現れています。長い歳月を経て塗膜が劣化し、細かくひび割れた部分などもあり、根来塗の表面には独特の枯れた趣があります。用に耐えたあるがままの姿が、人為的なものにはない、自然の魅力となっているのです。また、根来塗の器物は実用に徹したものが多く、無駄のない単純明快なその形には、一種モダンな、鋭い造形感覚をみてと ることができます。

主な出品作品

*所蔵の表記の無いものは、当館蔵品です。
重要文化財 朱漆折敷・けい子 室町時代・長禄元年(1457) 愛知・真清田神社蔵
重要文化財 朱漆三脚盤 南北朝時代・康暦元年(1379) 高知・最御崎寺蔵