本館 13室
2007年6月12日(火) ~ 2007年9月17日(月・祝)
中世の寺院や神社で用いられた調度や器には、朱漆(しゅうるし)を塗ったものが数多く見受けられます。このような古い朱漆塗の器物のことを「根来塗(ねごろぬり)」とよび慣わしています。鎌倉時代に高野山から紀伊国根来寺に移ってきた僧徒が、寺内で使用する漆器を制作したのが根来塗の始まり、という説がありますが、朱漆を塗った器物は平安時代には既に用いられていました。根来寺で制作された朱漆器が根来塗と称され、その名前が広まった結果、朱漆塗すべてが根来塗とよばれるようになったのでしょう。
根来塗の多くは黒漆を塗った上に朱漆を塗り重ねており、長年使われたことによってところどころ朱漆が摩滅し、下に塗った黒漆が表面に現れています。長い歳月を経て塗膜が劣化し、細かくひび割れた部分などもあり、根来塗の表面には独特の枯れた趣があります。用に耐えたあるがままの姿が、人為的なものにはない、自然の魅力となっているのです。また、根来塗の器物は実用に徹したものが多く、無駄のない単純明快なその形には、一種モダンな、鋭い造形感覚をみてと ることができます。