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能「箙」の面・装束

  • 『厚板唐織 緑白段檜垣梶葉模様 江戸時代・18世紀』の画像

    厚板唐織 緑白段檜垣梶葉模様 江戸時代・18世紀

    本館 9室
    2008年2月19日(火) ~ 2008年4月20日(日)

     江戸時代、幕府の式楽(儀式の際の音楽)となった能の中で、武家にもっとも好まれた演目のひとつが能「箙(えびら)」です。

      主人公は源平における生田の合戦で活躍した名将・梶原源太景季(かじわらげんたかげすえ)、いや、その亡霊です。物語の場面は、西国(九州)から都見物 のために出てきた旅の僧が、生田の古戦場に差し掛かるところから始まります。僧侶役の頭巾である角帽子(すみぼうし)と、水衣(みずごろも)をまとった質 素な身なりの旅僧が須磨(すま)の国(今の兵庫県)生田川にやってくると、武士の略礼装である素襖(すおう)を着た男がひとり、じっと梅の花を眺めていま す。旅僧が梅の名とそのいわれを問うと、男は「昔ここ生田で源平の合戦があり、平家10万騎に対し、源家6万騎が果敢に戦った。その時、風雅にも戦いの最 中に梅に心を寄せ、箙にこの梅を挿して敵方に立ち向かった若い武将がいた。彼の活躍にちなんで、私はこの梅を『箙の梅』と呼ぶのです」と語ります。旅僧が 一夜の宿を男に所望すると、男は、「私はこの梅の主で、箙に梅を挿して戦った梶原源太景季の幽霊なのだ」と正体を明かし、どこへともなく消えてゆきます。 旅僧がいぶかしく思っていると、肩衣(かたぎぬ)に半袴(はんばかま)を付けた所の者(生田の住民)がやってきて、生田の合戦における景季の活躍を語って 聞かせます。そこへ、鎧(よろい)姿に若武者の面「平太(へいた)」をつけた景季の霊が登場します。この時、能舞台では実際の甲冑(かっちゅう)のかわり に壮麗な金襴(きんらん)や錦でできた法被(はっぴ)と呼ばれる上衣を肩脱ぎにして、半切(はんぎれ)という袴を着用します。景季の霊が晴れやかな合戦の 裏にある修羅(しゅら)の苦しみを舞い、生田の合戦で梅を箙に挿して戦った様子を再現して見せるうちに、旅僧は夢から覚めます。景季は旅僧の夢枕に立った 幻となって消えてゆくのでした。

主な出品作品

*所蔵の表記の無いものは、当館蔵品です。
厚板唐織 緑白段檜垣梶葉模様 江戸時代・18世紀
法被 金地蜀江模様 江戸時代・18世紀