東洋館 8室
2021年1月2日(土) ~ 2021年2月28日(日)
中国では明時代(1368~1644)の中期以降、経済発展が著しかった江南地方を中心に、書画の収蔵が盛んに行われました。項元汴(こうげんべん)は当時を代表する大収蔵家で、明末には宮廷を凌ぐほど民間のコレクションが充実しました。続く清時代(1616~1912)の初期にも、華北地方の孫承沢(そんしょうたく)や梁清標(りょうせいひょう)をはじめ、著名な収蔵家が輩出しました。しかし、その収蔵品の多くはのちに宮廷に入ることとなります。清朝の皇帝たち、特に康熙帝(こうきてい、位1661~1722)と乾隆帝(けんりゅうてい、位1735~96)は、書画の収集に意を注ぎ、民間の優品を吸収した質の高い壮大な宮廷コレクションを築いたのです。
一方、民間における書画の収蔵や鑑賞も依然、活況を呈していました。清時代中期から後期にかけては、碑帖に執心した翁方綱(おうほうこう)や李宗瀚(りそうかん)などのコレクションが知られています。また、貿易で栄えた広東地方にも、呉栄光(ごえいこう)や潘正煒(はんせいい)らの収蔵家が輩出しました。激動の清末から中華民国期には、世情に左右されながらも、楊守敬(ようしゅけい)、端方(たんぽう)、羅振玉(らしんぎょく)など、日本とも関係の深い収蔵家が旺盛な活動を展開しました。
このような、清朝の皇帝や高官、富裕層が所蔵した書画は、辛亥革命(1911~12)を契機として日本にも流入し、質の高いコレクションが形成されました。台東区立書道博物館所蔵の中村不折(なかむらふせつ、1866~1943)と当館所蔵の高島槐安(たかしまかいあん、1875~1969)の収集品も、その好例です。台東区立書道博物館との連携企画第18弾にあたる本展では、書道博物館で中村不折、当館で高島槐安の収集品に焦点をあて、清朝における官・民の書画コレクションを概観します。本展を通して、中国伝統の文化を受け継ぐ両コレクションをご堪能いただけますと幸いです。