本館 14室
2020年3月24日(火) ~ 2020年5月10日(日)
奈良の斑鳩(いかるが)に所在する法隆寺は、日本に仏教が伝来して間もない飛鳥時代に建てられた、日本屈指の古刹(こさつ)のひとつです。この法隆寺を建てたのが、当時最先端の大陸文化を受け入れながら、国家の形成に尽力した聖徳太子(厩戸皇子(うまやどのおうじ))でした。太子が灯(とも)した法灯や太子への思慕の証(あかし)が、現在まで大切に守られてきた法隆寺に伝わる数多くの寺宝です。
明治時代の初めには、廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)などのために、社寺の多くの宝物が破壊され、散逸してしまいました。こうした危機を目の当たりにした政府は、明治21年(1888)、寺社等の宝物の悉皆(しっかい)調査を実施し、同時に宝物の模写・模造を行ないました。その成果が帝国博物館(現、東京国立博物館)で展示されることで、宝物が貴重な文化遺産として認識されるようになっていったのです。本特集では、このような経緯で明治時代に作られた、東京国立博物館が所蔵する法隆寺の寺宝・模写・模造を展示します。
現在の文化財保護法は、昭和24年(1950)に法隆寺金堂の火災をきっかけに制定されました。本特集が、その前史としての、日本の近代における文化財保護と活用の歩みを知り、法隆寺宝物、聖徳太子への思慕などに思いを致すきっかけとなれば幸いです。