本館 特別2室
2015年9月29日(火) ~ 2015年10月25日(日)
古来人々は、目の前の対象を観察し、ありのままに描く「写生」を行ってきました。江戸時代中期には博物学が興隆し、動植物を写生し、記録することが重視されました。屏風や画帖などにも、博物図譜さながらの多彩な動植物が描かれるようになります。このような、博物学と絵画との共鳴や、江戸の写生図の鮮やかな開花には、萌芽の時期がありました。
江戸の写生図が芽吹いたのは江戸時代初期、寛文年間(1661~73)頃のことです。とくに狩野探幽(かのうたんゆう)筆「草花写生図巻」と狩野常信(つねのぶ)筆「草花魚貝虫類写生図巻」がその先駆的作例といえます。探幽と常信は、写生の構図や描法において、中国絵画や日本の伝統的花鳥図を手本としました。その一方で万治年間(1658~61)にオランダから舶載された植物図の影響もうけていたとみられます。
この特集では幕府御用絵師の探幽と常信に焦点をあてて、写生図が江戸文化に可憐な彩りを添えていく萌芽の時期をご紹介します。