本館 特別2室
2015年8月11日(火) ~ 2015年9月23日(水・祝)
後水尾院(1596~1680、在位1611~29)は江戸時代の最初期の天皇で、中宮は二代将軍徳川秀忠の娘である東福門院和子、二人の間の皇女は明正天皇となりました。徳川家や幕府と深い関係をもつことで、その後の公武関係を方向付ける役割を果たしたといえます。
後水尾院が和歌や立花(いけばな)など、文化において主導的な存在であったことはよく知られています。例えば、「古今伝授」によって古今和歌集の奥義を教わることは一流の文化人の証であり、特に後水尾院から直接伝授されることは最高の名誉でした。二条為明筆「古今和歌集」(重要文化財)や、土佐光起筆「十二ヶ月歌意図巻」の寄合書には、こうした事情が現れています。宮廷人による寄合書作品は婚礼調度や下賜品として武家にももたらされます。住吉具慶筆「徒然草画帖」のように、絵と寄合書がともに優れた作品を所持することは、宮廷文化とのつながりの証でもありました。
このような状況にあって、後水尾院は、やまと絵の制作にも大きな影響力をもちました。土佐光起が宮廷絵所預となって土佐派を再興した一方、新興勢力として活躍した如慶・具慶の住吉派は、後水尾院のお墨付きを得て創始されました。彼らやまと絵の絵師たちは、時に後水尾院の周辺の公卿たちとともに和歌や文学を題材とした作品を制作しました。
この展示では、後水尾院の和歌や立花、指導者としての姿を伝える作品などを交えて、江戸初期のやまと絵がもつ背景を紹介します。