平成館 企画展示室
2012年4月10日(火) ~ 2012年5月27日(日)
首の長い動物キリンが日本にはじめてやってきたのは明治40年(1907)のことですが、明治10年(1877)には剥製がもたらされ、当時の東京国立博物館で展示されました。その姿が描かれたのはさらに18世紀の終わり頃にさかのぼります。その絵のもとになったのは、1419年にアフリカから中国にもたらされたキリンでした。しかし、すでに中国では紀元前5世紀、日本でも8世紀には、“きりん”と呼ばれる動物の姿が表されていました。それがこの展示の主題である麒麟(きりん)です。
麒麟は、体は鹿、尾は牛、蹄(ひづめ)は馬に似ていて、頭上に一本の角があり、体には五色の毛が生えるという不思議な姿をしています。寿命は千年とも三千年ともいわれますが、いつでも見られるわけではなく、世の中が良い政治で治められているときにだけ姿を現わすといわれます。すでにお気づきのように、麒麟は龍や鳳凰、獅子などと同じように想像上の動物です。
麒麟は、古代よりおめでたい動物として、美術品の中に表されました。正倉院にも麒麟が表された宝物があります。日本では麒麟が主役となることは稀で、工芸品の文様や装飾として表されるのがほとんどですが、平安時代後期に描かれた京都・高山寺所蔵の鳥獣人物戯画巻に登場するのは注目されます。
この展示では麒麟のほか、龍や鳳凰など他の幻の動物、また、明治時代の初めに、西洋からもたらされた情報をもとに描かれた実在するキリンの姿も紹介します。