文化財を守り、伝えるために
わたしたちの使命は、東京国立博物館が所蔵するおよそ11万件の文化財の保存と公開です。保存と公開の両立を図るためには、包括的な保存が必要となります。それは、長期的な見通しの下で予防と修理を的確に実践することです。
わたしたちは、これまでの経験と最新の研究成果を用いた臨床保存の実践を通じて、文化財に生じた劣化・損傷の診断と修理、保存環境の把握と改善など、診 断・予防・修理に日々取り組みながら、包括的保存の実現を目指しています。
全体の流れ
修理
当館では、文化財がつくられた当初の姿を大切にしながら素材や傷み方に応じて修理を行います。修理には、最小限度手を加える対症修理から、解体を含む本格的な修理までさまざまなものがあります。
剥落止め
修理作業に備えて、絵具の剥がれ落ちることを防ぐため、危険な箇所をあらかじめ接着する。
解体
寄木造りの彫刻を、ゆがみの調整とクリーニングのために解体する。
クリーニング
水彩で描かれた女性の顔についているシミはカビ跡。カビによる汚染が紙を傷めるので、汚染物質を取り除く必要がある。
補強・充填
絵巻の、虫が食べてなくなってしまった部分には、同じような材質の紙で補う。
接合・復元
昔修理された甕(かめ)の再処理。いったん解体し、クリーニングした後、再び接合・復元する。復元箇所にのみ補彩をして、仕上げる。
解体
昔の修理の接合をばらし、発見された当初の状態にもどす。
接合
再度組み合わせる。
補彩
失われた部分を埋め合わせた場所のみ色をつける。