国宝 納涼図屏風 (部分)
久隅守景筆 江戸時代・17世紀
本館 2室
2025年7月23日(水) ~ 2025年8月17日(日)
晩夏の夕べ、粗末な小屋の傍らに竹で組まれた棚には瓢簞の実が下がり、筵を敷いて三人の家族が涼みながら無言で白い満月を見つめています。月の周りは暗く、間もなく夜のとばりが落ちてくることを知らせています。近くに小川の流れがあるのか、砂利が細かく描かれていて、一筋の涼風も感じさせます。
三人の身なりは貧しく見えますが、寝そべる男は気概を感じさせる凛とした表情です。三人の輪郭線や月、竹竿などのモチーフすべてが、異なる筆法で描き分けられていて、卓抜した画力が遺憾なく発揮されています。一日の労働の後、清涼を求め家族で寛ぐひとときですがどこか、もの悲しさを感じさせます。
作者の守景の子も絵師でありましたが、息子は不行跡がたたって佐渡に流され、娘も父のもとを離れたようです。この絵を見ていると、夫婦とその子というよりも、父をはさんで寄り添う二人の子への守景の思いが込められているように思えてなりません。
作者の守景は生没年など不詳であり、謎めいた江戸時代初期の絵師です。徳川将軍家に仕え、当時の画壇に君臨した狩野探幽(1602~74)の高弟で、門下の四天王の一人として知られましたが、師から破門されたとも、加賀藩(現在の石川県、富山県)に仕えたとも伝えられています。
指定 | 名称 | 員数 | 作者・出土・伝来 | 時代・年代世紀 | 所蔵者・寄贈者・列品番号 | 備考 | |
おすすめ | 国宝 | 納涼図屏風 | 2曲1隻 | 久隅守景筆 | 江戸時代・17世紀 | A-11878 |