国宝 法華経 方便品(久能寺経)(部分)
平安時代・12世紀 静岡・鉄舟禅寺蔵
本館 2室
2025年2月18日(火) ~ 2025年3月16日(日)
「久能寺経」は静岡市の南部、久能山にあった久能寺(現在の鉄舟禅寺)に伝来した写経です。『法華経』28品(章)を各品1巻に仕立てた「一品経(いっぽんぎょう)」で、同経の序と結のような『無量義経(むりょうぎきょう)』と『観普賢経(かんふげんきょう)』を合わせて、もとは全30巻であったとみられます。極楽往生を願い、仏との縁を結ぶべく、各巻1人が結縁者となって制作されました。巻末の結縁者と思しき名前から、鳥羽法皇(とばほうおう、1103~56)と中宮・待賢門院璋子(たいけんもんいんしょうし、1101~45)を中心に、周辺人物が制作にたずさわり、両者いずれかの出家に際した生前の供養(1141年、1142年)のための写経であったと考えられています。
この「方便品」は、仏の智慧は甚だ深く知りがたいと述べ、ありのままの真実の姿を見極めることが仏の悟りであると説きます。料紙は浅葱色の染紙に金銀の箔を散らし、銀泥で界線(罫線)を、金銀泥や顔料で折枝、水辺の草花、鳥などの図様をほどこします。墨書による経文は、まるみのある点画で、文字内の余白を広くとり、明るく柔和な字姿をしています。結縁者が贅をこらし、善美を尽くして作られた「久能寺経」には、徳を積み、往生を願う厚い信仰心と、高い美意識がうかがえます。
指定 | 名称 | 員数 | 作者・出土・伝来 | 時代・年代世紀 | 所蔵者・寄贈者・列品番号 | 備考 | |
おすすめ | 国宝 | 法華経 方便品(久能寺経) | 1巻 | 平安時代・12世紀 | 静岡・鉄舟禅寺蔵 |