本館 特別1室・特別2室
2013年10月29日(火) ~ 2013年12月8日(日)
古来日本の風景は、多くが、詩歌に詠まれた歌枕の名所として、実際の景観とは異なるイメージで描かれてきました。しかし、江戸時代、特に18世紀になると、世の中が安定し街道などが整備されていく中で、実景に対する関心が高まり、画家自身もまた、自らの旅の体験や感興をもとに風景を描くようになります。その際に用いた構図や描法は、当時長崎を通じて舶来した、中国や西洋の新しく刺激的な文物の影響によるものでした。新たな視覚、そして新たな画材や技法を手に入れた画家たちは、日本の風景をどのように描いたのでしょうか。
本陳列では、特別1室において、中国に強いあこがれを持ち続けた画家たちが、自らの体験と感動に基づいて描いた真景表現による作品を、中国・朝鮮絵画を交えて提示し、特別2室においては、実景に対する強い関心を抱いた画家たちが、遠近法や陰影法、新しい画材や技法を駆使して描き出した作品を、版本や浮世絵とあわせて展示します。
展示する作品は極めて多彩であり、江戸絵画史上でもひときわ人々の目を惹きつける魅力を持っています。多様な実景表現をみることで、江戸時代絵画の豊穣な世界をお楽しみいただきたいと思います。
担当研究員の一言
松島や熊野、そして富士山…画面の風景に心を遊ばせながら、会場で名所の旅を楽しみませんか? 日本の画家たちが強くあこがれ、見ることの叶わなかった中国絵画の名品「上海博物館 中国絵画の至宝」(東洋館8室)と合わせて、ぜひご覧ください。/大橋美織