本館 12室
2011年3月15日(火) ~ 2011年6月5日(日)
桜は春寒がゆるむとともに一斉に開花して景色を彩り、人々の目を楽しませますが、瞬く間に散ってしまいます。 しかし、その潔さや儚さが人々の心の琴線に触れたのではないでしょうか。和歌の古典で「花」といえば桜の花を指し、古来より日本人は貴賎を問わず、花見に 興じてきました。
ただし漆芸の分野に関していうと、桜を主題にした作品の登場は意外に遅く、室町時代以降に作例が見られます。特に近世以降は堰を切ったように、桜をデザ インに取り入れた漆芸品が多数制作されました。桜は、日本の漆工における典型的な文様の一つとなっています。中でも蒔絵の名品には古典文学に因んだ意匠が 多く、花の名所として知られる初瀬(奈良県)や比良(滋賀県)を詠んだ和歌を象徴的に表現した硯箱などを、その代表としてあげることができます。
いろいろな用途や形式の作品に、様々な技法によって表わされた桜の意匠を通して、日本人がいかに桜を愛でてきたかをご覧いただきます。