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石板で肉を焼き、ガラス玉を想う 特集「フォルモサ(美しき島)の豊かな暮らし」その3


まずは台湾南部の屏東県にある屋外博物館「臺灣原住民族文化園區」を訪問したとき、お知り合いになった猫君をご覧ください。
とくに意味があるわけではないですが、猫画像を見ると幸せな何かが分泌されるそうです(あと閲覧率が上がるかもしれない)。
癒しを得てから話を進めましょう。
 
この「臺灣原住民族文化園區」の大きな特徴として、原住民族の伝統家屋が再現展示されている点が挙げられます。
現在、台湾で公認されている16の原住民族は、その使用する道具や衣服、生活様式が明確に異なり、隣接する地域に居住している民族でもくっきりと区別することができます。
たとえばプユマ族、パイワン族、ルカイ族はいずれも台湾南部に居住しますが、プユマ族は竹に茅葺き屋根の家屋に住み、一方でパイワン族・ルカイ族は石板を積み重ねた家屋が特徴です。
プユマ族一般家屋(再現)と猫君(臺灣原住民族文化園區)

阿禮社(ルカイ族)頭目家屋(臺灣原住民族文化園區)
 
掲出の画像は一般家屋と頭目家屋なので公平な比較ではありませんが、これだけでも生活そのものに対する考え方が根本的に異なることがわかるかと思います。
三地門(パイワン族集落)の街並。左側の住居の塀や門に白黒の幾何学的模様の蛇があしらわれている
 
現在のパイワン族集落は石積み家屋ではありませんが、壁の装飾画や道路の文様など、そこかしこにパイワン族が祖霊とする百歩蛇の図像が見られます。
パイワン族、ルカイ族はよく似た文化を持ち、同じく家屋に用いる平たい石板を利用して烤肉(焼き肉)を食べます。画像は石板烤肉と伊那比拉(イナピラ 芋と猪肉の腸詰)、ニンニク。
 

 

左はカットした伊那比拉で、右は吉拿富(チナブ)と阿拜(アッバイ)。どちらも猪肉と粟を月桃の葉に包んで蒸したもので、阿拜は搗(つ)いてモチ状になっており、お祭りの際に食べるそうです。ほんのり甘く、口いっぱいにほおばると香気が鼻に抜けて美味しい。
上はカットした伊那比拉で、下は吉拿富(チナブ)と阿拜(アッバイ)。どちらも猪肉と粟を月桃の葉に包んで蒸したもので、阿拜は搗(つ)いてモチ状になっており、お祭りの際に食べるそうです。ほんのり甘く、口いっぱいにほおばると香気が鼻に抜けて美味しい。

 

ガラス首飾 パイワン族 台湾南部 19世紀後半~20世紀初頭 藤江志津氏寄贈 東京国立博物館蔵

トンボ玉部分拡大

 

さて、こちらは特集「フォルモサ(美しき島)の豊かな暮らし」―台湾の原住民族の資料―で展示中のパイワン族の首飾。橙色のガラス玉を二重に連ね、間に白や青、緑の管玉を挟んで、中央に模様のある玉(日本で言うトンボ玉)を配しています。

ガラスはもともと、天与の霊力をそなえた宝石を人工的に生み出すことのできる奇跡の素材です。自由に魔術的なシンボルを表すことのできるガラス製装身具は、色彩と輝きに満ちた理想郷と現実世界をつなぐものであり、身に着けることで強い霊力を引き寄せる護身的な役割を担っていました。パイワン族にとって、ガラス玉は結婚式において欠かせない贈り物であり、祝い事や祭礼に参加する際の必須の装飾品でもあります。
玉の色や模様には象徴性があり、たとえば白地に黄と赤で波を描く玉(本作では中央の玉から2個となりの一対)は「日光の玉」と呼ばれ、高い身分を示すものとして最も貴重視されました。緑地に目玉を描く「眼睛の玉」(本作では左右の端の一対)は災いを防ぎ、持ち主を守る意味を持ちます。富を示す橙玉を多く使用していることからも、高貴な人物が身に着けるべき組み合わせです。
 
こうした台湾のトンボ玉について、日本で早い時期から関心を示し、精力的に蒐集・分類をはじめた人物がいます。
加賀百万石の主から侯爵へと転身した、加賀前田家の16代当主・前田利為(としなり)(1885~1942)です。
利為は「蒐集」と「整理」をこよなく愛していたようで、前田家伝来の文化財にさらに光彩を加えています。
トンボ玉蒐集もその一つで、大正15年(1926)の台湾旅行中、台湾総督府の宮原敦・服部武彦からトンボ玉についての講話を聞いたことがきっかけだったようです。
その後、利為は死没する直前まで世界各地のトンボ玉の蒐集・整理を続けました。
利為のトンボ玉標本は一点ずつ糸を通して区画された箱に収め、産地などの情報とともに保存するもので、工芸資料集としての体裁が整っています。先に見た「ガラス首飾」と同じ玉もある一方、当館所蔵品にはない多彩な玉も収められており、蒐集時期も含めて重要な情報を提供しています。
同じく前田家の重宝、重要文化財「百工比照」をご覧になった方ならピンとくるかもしれませんが、江戸時代の工芸資料集である「百工比照」の几帳面な整理方法と通じるものを感じます。
 
利為の蒐集した「トンボ玉」は、本特集と同じ平成館で開催中の特別展「百万石!加賀前田家」で展示中です。
特集「フォルモサ(美しき島)の豊かな暮らし」―台湾の原住民族の資料―をご覧になった際は、こちらにもぜひお立ち寄り下さい。 
 
パンフレット
特集「フォルモサ(美しき島)の豊かな暮らし」
―台湾の原住民族の資料―


編集:東京国立博物館

パンフレットでは、本展にかかる調査研究について解説しています。
フォルモサの世界を知る機会となれば幸いです。
本特集ページよりPDFをダウンロードしていただけます。

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本特集の担当研究員によるリレーブログ

 

カテゴリ:特集・特別公開工芸調査・研究

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posted by 福島修(貸与特別観覧室長) at 2026年05月15日 (金)

 

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