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いつもと違う展示

内藤礼 生まれておいで 生きておいで」はいつもの東博の展覧会とは少し雰囲気が違います。
考古作品を大胆にトリミングしたポスタービジュアル、解説のない展示室、自然光を取り込んで刻々と変化する光など、普段の東博の展示とは違ったアプローチで、鑑賞者がモノや空間と繊細に向かい合わざるを得ないような展示になっています。

 
自然光で撮影された写真を大胆にトリミングしたポスター
重要文化財 足形付土製品(部分) 新潟県村上市 上山遺跡出土 
縄文時代(後期)・前2000〜前1000年 東京国立博物館蔵 撮影:畠山直哉

第2会場の本館特別5室には、当館所蔵の考古作品が入った展示ケースがいくつか設置されています。


低い。地面に置かれている感覚に近い低さ。
「内藤礼 生まれておいで 生きておいで」第2会場
撮影:畠山直哉

写真を見てお気づきのように、これらの展示ケースは普段の東博の展示では考えられないほど低く設置されています。
この低い展示ケースで見る作品は、見やすい高さに設置された通常の展示ケースで見る場合と全く印象が違います。
地面を見下ろすような鑑賞は、足形付きの土製品が足跡に見えるような新鮮な感覚を覚えます。
(足形付土製品:https://colbase.nich.go.jp/collection_items/tnm/J-38391?locale=ja)
この職員や監視スタッフを心配させるほど低く設置された展示ケースですが、うっかり接触しても簡単には動かないようにしたり、地震から守るための免震装置を設置したり、しっかりと安全対策も行なっています。
このために用意した免震装置は、数ミリしかない超薄型のものを使用しています。
高い天井の空間を使った作品も本展の見どころです。見下ろしたり、見上げたり、さまざまな視点で展示を楽しんでみてください。


展示ケースと床の間に設置された超薄型の免震装置

また特別5室は、東西の窓のシャッターを数十年ぶりに開放して自然光のみで展示しています。
天候や時間によって光が常に変化するので作品の印象が見るたびに違います。

展覧会の準備のためにシャッターを開けた時に、西と東で窓ガラスが違うことに気が付きました。
東側は透明なガラス(竣工当時の製法であるフルコール法やコルバーン法で作られた板ガラス。波打つ歪みが美しい)、西側は曇りガラスになっています。
これは西日の強い光を抑える設計だと考えられます。


(左)東側窓ガラス (右)西側のガラス

展示は、何を、どこに、どう置き、どう光を当てるかで感じ方が全く変わるものです。
本展はそれを様々な面で強く感じる展示です。本展でたくさんの「違い」を感じて得た視点で、総合文化展を見ると、また新しい発見があるかもしれません。
内藤礼展は、比較的ゆったりしている平日の午前中がおすすめです。

カテゴリ:「内藤礼」

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posted by 荻堂正博(デザイン室) at 2024年07月10日 (水)