本館 9室
2008年4月22日(火) ~ 2008年6月15日(日)
舞楽はもともと、古代中国や朝鮮で創造された舞を伴う音楽でした。8世紀頃までに日本に流入し、平安時代に宮廷貴族の間で仏教法会や余興として盛んに催されるようになり、和様化が進みました。その過程で、異国風だった舞楽装束にも公家装束の影響が加わり、日本の舞楽特有の装束が着用されるようになりました。
その後、舞楽は伝統芸能として寺社の祭礼などで催され、その装束は伝統を守りながら、時代の美意識や技術の変化に合わせて改変されてきました。
残念ながら消耗品としての性格が強い染織品はその変遷をつぶさにたどるための資料が十分にのこされてはいません。現在のこされている資料の多くは江戸時 代中期から明治時代にかけて奈良・南都楽寮(なんとがくりょう)、大阪・四天王寺(してんのうじ)、栃木・日光山輪王寺(にっこうざんりんのうじ)などで 使用された装束です。また、京都・東寺(とうじ)(教王護国寺(きょうおうごこくじ))の鎌倉時代の装束、和歌山・高野山天野社(こうやさんあまのしゃ)の室町時代の装束など、中世の様式をうかがえる伝世品がのこされています。東京国立博物館では、それらの伝世品の中から、いくつかの模造を製作することによって装束の歴史を研究してきました。また、和歌山・高野山天野社伝来の舞楽装束ならびに舞楽面の一部は東京国立博物館に所蔵されています。
これまで本館では、江戸時代後期に様式が定まり、現代もその形態が継承されている舞楽装束を展示してきました。今回は、伝統を守るそれらの舞楽装束が、どのような変遷を経てきたのかを、鎌倉時代の装束の模造や室町時代の伝世品をもとにたどります。