平成館 考古展示室
2005年7月20日(水) ~ 2005年9月19日(月・祝)
東大寺山古墳は、奈良県天理市に位置する全長140メートルの前方後円墳です。昭和35年(1960)の発掘調査で、多量の碧玉(へきぎょく)製腕飾りなどが出土しましたが、なかでも大刀の1本に文字が刻まれていたことで注目されました。
この大刀は、鉄製の刀身は内反りで、青銅製鋳造の花形飾り環頭柄頭(かんとうつかがしら)がついています。本来は飾りのない素環頭(そかんとう)であったものを、何らかの理由で青銅製の環頭に付け替えたものと考えられています。同じような細工をしたものが計5本あり、花形飾りをもつものが3本、家形飾りをもつものが2本出土しています。
刀身の背には、一部失われていますが、金象嵌(きんぞうがん)で図1の24文字が刻まれていたと考えられています。「中平」(184~189)は後漢の霊帝時代の年号で、『後漢書』東夷伝倭人条によれば、この頃倭国に大乱があったとされています。この乱を収めたのが卑弥呼です。この大刀は中国製と考えられていますが、いつ日本にもたらされたかはっきりしません。卑弥呼がもらったとする説もあります。いずれにせよ、日本出土の最古の銘文大刀としてよく知られています。
2005年秋にオープンする九州国立博物館の展示のために、レプリカを製作したいという意向を受けて、この2年間は展示から降ろして、そのためのデータ収集や科学的調査を実施し、必要な保存処置を施しました。また、調査の結果をふまえて新たな保存展示台を作成しました。生まれ変わった大刀をぜひじっくりと見てください。
今回の特集陳列では、この銘文大刀のほか、この大刀について理解を深めていただくために、もとの姿と考えられる素環頭大刀、同様に付け替えられた青銅製環頭柄頭(家形飾り、花形飾り)をあわせて展示しました。向かい側のケースには、東大寺山古墳から出土した、碧玉製腕飾りをはじめとする多数の出土品が展示されていますので、あわせてご覧ください。