本館 特別1室
2015年4月28日(火) ~ 2015年6月7日(日)
高山寺に所蔵される国宝・鳥獣戯画。平成21年(2009)から4年をかけた修理が行なわれましたが、今からおよそ130年前の明治14年(1881)にも、国立博物館の前身である博物局によって修繕が施されています。
そのきっかけとなったのが明治5年(1872)、町田久成(まちだひさなり)、蜷川式胤(にながわのりたね)らによって行なわれた「壬申検査(じんしんけんさ)」と呼ばれる宝物調査でした。同年7月21日から23日の間、調査団は高山寺を訪れ、多くの文化財を眼にしましたが、その中には「鳥羽僧正(とばそうじょう)筆画巻物 四本」とある鳥獣戯画も含まれていました。おそらくはこの宝物調査により修理の必要性が説かれ、およそ10年後に修理がなされたのです。
この特集では、近代における鳥獣戯画という文化財と、高山寺をめぐる状況を、明治5年の壬申検査の記録や、その後に写された模本や写真資料などからたどります。ここで紹介する鳥獣戯画の二つの記録方法は、「模写」に加えて「写真」という新たな文化財の記録方法が導入されるようになった最初期の事例の一つと言えるでしょう。本特集では、明治に写された極めて精緻な鳥獣戯画の模本の中から、甲巻の全場面を一挙公開します。