本館 4室
2012年9月4日(火) ~ 2012年11月25日(日)
広田松繁(まつしげ)氏は明治30年(1897)に富山県八尾(やつお)町(現富山市)に生まれました。12歳のときに古美術商の世界に身を投じ、中国陶磁をはじめとするいわゆる鑑賞陶器の分野のパイオニアの一人として活躍されました。昭和24年(1949)には隠退して不孤斎(ふっこさい)と号しました。
氏は昭和22年(1947)、昭和42年(1967)、そして逝去の前年の昭和47年(1972)の3回にわたり、収集品のほぼすべて、496点を当館にご寄贈されました。これにより、東洋館をはじめ、当館の展示は格段に充実しました。
広田松繁コレクションの中核は鑑賞陶器としての中国陶磁ですが、氏は晩年に茶の湯にも関心を向けたため、茶碗や花入といった茶道具にも優品が少なくありません。日本の代表的な伝統文化の一つである茶の美術の展示において、欠かせない存在となっています。
古美術商としての目と経験に裏打ちされた広田松繁コレクションは、きわめて個性的であり、鑑賞陶器である清時代の景徳鎮官窯(けいとくちんかんよう)の鉢を水指に仕立てるなど、大胆な見立ても行われています。また、数多くの名品が含まれているばかりでなく、小品に見所のある作品が多いことが大きな特色といえるでしょう。