平成館 企画展示室
2012年10月2日(火) ~ 2012年11月25日(日)
魏晋から唐時代までの貴族文化に対して、宋時代には、科挙の試験に及第した士大夫が学問芸術を担うようになり、書の表現においても質的な変化がもたらされました。非の打ち所がない完璧なまでの書法を追求した唐時代に代わって、宋時代になると「尚意(しょうい)」、すなわち人間の個性や精神性を尚ぶようになります。
北宋時代に活躍した蔡襄(さいじょう)・蘇軾(そしょく)・黄庭堅(こうていけん)・米芾(べいふつ)は、北宋の四大家と尊称されています。なかでも蔡襄は伝統的な書法を継承し、格調高い書風を伝えました。これに対し、蘇軾と黄庭堅は、個々の人間性を高らかに謳い上げるような、自由で個性的な書風を創出しました。米芾は歴代の名跡に親しみ、晋人の響きの高い書に肉薄しました。
南宋時代には、北宋の四大家の影響を受けながらも、やがて南宋独自の特質を備えた書風が花開きます。宋学を大成した朱熹(しゅき)は古法に捉われずに自らの胸襟を吐露する書をよくし、後世の人々はその断簡ですらも争って求めました。また、禅学にも造詣の深い張即之(ちょうそくし)は、清勁な書風を創出し、日本の禅僧たちにも大いに尊ばれました。
今年は、北宋の四大家の一人、蔡襄(1012~67)の生誕1000年にあたります。台東区立書道博物館との連携企画第10弾にあたる本展では、宋時代の名品や拓本を通して、北宋から南宋に至る書の流れを概観します。