教育普及室の川岸です。
ファミリー向けの展示「親と子のギャラリー」やワークショップ、児童・生徒のみなさんを対象としたプログラムなどを担当しています。
私事ですが、昨年1児の母となり、予想外の行動をするわが子を抱え、日々奮闘しています。
息抜きに展覧会に行きたいな、と思ったのは産後1ヵ月を過ぎた頃のことでした。
でも次の瞬間、思い浮かんだのは静かな展示室で泣き叫ぶわが子と、おろおろする自分の姿。
勇気を出して、子連れトーハクデビューした際も、作品よりも周りを気にしながら、足早に展示室を後にしたことを覚えています。
私と同じような不安を感じ、トーハクにくることをあきらめてしまうパパさん、ママさんは少なくないはず。
そんな子どもたちと子育て中のみなさんのために、7月27日(月)に行われたのが、「クレオパトラとエジプトの王妃展」キッズデーです。

うだるような暑さのなか、新米ママの私も潜入してきました!
普段は邪魔にならないよう預けておくベビーカーに、わが子を乗せ、展示室へ向かいます。すっかり重たくなったわが子も、着替えや離乳食など大量の荷物も乗せられるのでありがたい!

展示室にはたくさんの子どもたちの姿がありました。
「あれはなに?」と会話をはずませながら、この日特別に配られたワークシート「クレオパトラ新聞」に取り組んでいます。
まだ生後10ヵ月のわが子も、お兄さん、お姉さんの声でにぎやかな展示室でご機嫌。
「死んだ後、かわりに働いてくれる人形だよ」などと話しかけたりしながら、私自身が展示を楽しむ余裕がありました。

トーハクの研究員によるギャラリートークも、いつもとは違う雰囲気。
学校も学年も違うたくさんの子どもたちが、目を輝かせて聞いています。質問もたくさん!
授業とも違う、楽しい学びの時間だったのでは?
トーハクの展示をこんなに楽しんでいるなら、また連れてきてほしい!
わが子がもう少し大きくなったら、こんなふうに楽しめるかなぁ、参加させてあげたいぁ、と思う光景でした。
心配だった授乳やオムツ換えも難なくクリア!
1階ラウンジでは持参した離乳食を電子レンジで温め、食べさせることができました。
電子レンジやお湯があると、お昼にかかるお出かけには本当に助かります。
セルフサービスなのも安心でした。

同じく平成館ラウンジにつくられたぬりえや写真撮影のブースもにぎわっていました。
なかなかお目にかかることのない100色の色鉛筆にテンションもあがり、王妃のイラストをデザインしたぬりえに集中する子どもたち。
そしてエジプトの衣装を着てパチリ! 夏の思い出ですね。

私が一番うれしかったのは、子どもが自由に過ごせるキッズスペース。
絨毯が敷いてあり、余計なものが置かれていないので、まだハイハイしかできないわが子の、よい気分転換スポットになりました。
もう少し年上のお子さんは、キッズスペースに置かれたミイラの絵本を読んだり、親子や兄弟、お友達とのんびり話をしたりして過ごしていました。
あるママさんは「気兼ねなく展覧会を楽しめてうれしい」とおっしゃっていました。
お子さんも、「これ、意外にできた」と自慢げにクレオパトラ新聞を見せてくれました。
ふたりの声を聞いて、安心しました。
キッズデーは、子育て中の職員のアイデアも取り入れながら企画されたトーハク初の試み。
子どもたちにも、子育て中のみなさんにもトーハクを楽しんでもらいたいという職員の気持ちがつまっていたんです。
またキッズデーを開催できる日を、みなさん同様、私たち職員も心待ちにしています。
カテゴリ:news
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posted by 川岸瀬里(教育普及室) at 2015年08月04日 (火)
「あらまあ、あの軍団が来るの? 炊き出しはあるのかしら?」
奥さん、違います。石○軍団ではありません。
その軍団は、永遠を守る軍団なのです。
「永遠? 裕○郎さんの?」
…奥さん、一旦そこから離れましょうか。
紀元前221年、初めて中国を統一した「始皇帝」。
その永遠を守る軍団「兵馬俑」がトーハクにやってくるのです。

梅雨の中休みとなった、7月10日(金)。
トーハクでは、特別展「始皇帝と大兵馬俑」(10月27日(火)~2016年2月21日(日))の報道発表会が行われました。
今から約2200年前に「最初の皇帝」を名乗り、中国大陸に統一王朝を打ち立てた秦の始皇帝。

始皇帝の肖像 秦始皇帝陵博物院蔵 ※参考画像。展覧会には出品されません
その陵墓のほど近くに埋められた「兵馬俑」は、20世紀の考古学における最大級の発見のひとつと謳われ、
出土以来、新しい知見と驚きをもたらし続けています。

1号兵馬俑坑(中国・陝西省)
本展は、バリエーション豊かな兵馬俑と始皇帝にまつわる貴重な文物を一堂に紹介し、
始皇帝が空前の規模で築き上げた「永遠の世界」の実像に迫る展覧会です。
当日は、展覧会ワーキンググループのチーフを務める、川村佳男主任研究員から展覧会の概要について紹介がありました。

あまり知られていませんが、日本で初めて兵馬俑を展示したのは実はトーハク!
1976年3~5月に開催した「中華人民共和国古代青銅器展」で3体の兵馬俑が展示されました。
その後も兵馬俑の出品される展覧会は数多くありましたが、
トーハクで催される「兵馬俑の展覧会」は、今回が初めてです。
本展で展示される兵馬俑は全10体。
「将軍俑」をはじめとする軍人の俑だけでなく、馬飼いの「馬丁俑」、芸人の「雑技俑」などバラエティーに富んでいます。
百戦錬磨の武将

将軍俑 秦時代・前3世紀 秦始皇帝陵博物院蔵
鋭い眼光の射手

跪射俑 秦時代・前3世紀 秦始皇帝陵博物院蔵
謎の巨漢

雑技俑 秦時代・前3世紀 秦始皇帝陵博物院蔵
兵馬俑は約8千体もあるといわれており、単体ごとの魅力もさることながら、
それらが並んで出土した発掘現場「兵馬俑坑」の迫力は圧倒的。
本展ではトーハクならではのスケール感で、軍団としての兵馬俑の迫力を感じていただくために、実物の兵馬俑とともに、約70体の精巧なレプリカで兵馬俑坑を再現します。

展覧会場(画像はイメージです)
これまでとは違った兵馬俑の魅力に出会うことができそうです。
「まあ、こちらの軍団もタレント揃いなのね。…特殊車両とかはないのかしら? ほら、西○警察みたいな。」
奥さん…それは…少しマニアックなところを持ち出してきましたね…。
しかし、よいご質問です。
特殊車両、ではありませんが、実は
始皇帝が実際に乗ったとされる馬車を青銅で細部まで再現した「銅車馬」も本展注目の作品なのです。
今回出品されるのは、残念ながら原品ではなくレプリカですが、
約6千もの部品と完全に写し取られた彩色の文様はまさに圧巻!

(左)【複製】1号銅車馬 (右)【複製】2号銅車馬 (原品)秦時代・前3世紀 秦始皇帝陵博物院蔵

1号銅車馬の御者は、ライフル…ではなく、弩(クロスボウ)を装備
複製とはいえ、2両を同時にご覧になれる機会は大変貴重です。
始皇帝の愛車(!?)を是非ご覧ください。
また、これらの兵馬俑、銅車馬に加えて、始皇帝の陵墓を中心とする陵園や始皇帝が暮らした咸陽(かんよう)宮殿遺跡から出土した作品からは、始皇帝の夢見た「永遠の世界」を垣間見ることもできます。
権力の重さ?

両詔権 秦時代・前3世紀 秦始皇帝陵博物院蔵
高度なインフラ技術

取水口/L字形水道管/水道管 戦国~秦時代・前3世紀 秦咸陽宮遺址博物館蔵
さらに、今回の展覧会では秦のサクセスストーリーにも迫ります。
従来からの春秋・戦国時代における他国との争いという視点だけでなく、
西方や北方に暮らしていた「西戎(せいじゅう)」、「匈奴(きょうど)」といった民族との関係を示す文物も登場し、
秦のダイナミックな歴史を感じることができる展示をお楽しみいただけるのではないかと思います。
秦初期の歴史を伝える鐘

秦公鐘 春秋時代・前8~前5世紀 宝鶏青銅器博物院蔵
北方草原とつながる豪華な短剣

玉剣・金剣鞘 春秋時代・前8~前7世紀 梁帯村文菅所蔵
さあ、いかがでしょう!?
奥さん、いえすべての皆様注目の展覧会はこの秋開催です。
本展覧会をより楽しんでいただくための情報満載のブログも計画中。
どうぞお楽しみに!
写真はすべて (C)Shaanxi Provincial Cultural Relics Bureau & Shaanxi Cultural Heritage Promotion Center
カテゴリ:news、2015年度の特別展
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posted by 田村淳朗(広報室) at 2015年07月17日 (金)
7月11日(土)、「クレオパトラとエジプトの王妃展」がついに開幕しました。

開幕に先立ち、7月10日(金)には開会式・内覧会を行い、大変多くのお客様にご出席いただきました。

さて、展示室に入ってすぐ、ひとりの美女がさっそくお客様の目線をくぎづけにしています。

クレオパトラ
ダニエル・デュコマン・ドゥ・ロクレ作
1852~53年
マルセイユ美術館蔵
この美女こそが、古代エジプト最後の女王にして本展のヒロイン、クレオパトラ(7世)です。
クレオパトラについては前回もご紹介しましたが、共同統治者として君臨し、弟との権力争いや、2人のローマの英雄との恋、そして彼女の死とともに古代エジプト王国も終焉を迎えるという大変ドラマチックな人生を歩みました。
さすがは、歴史に名を残す女王クレオパトラ。ローマの英雄どころか、お客様もすっかり虜です。
私たちのハートを奪い去る魅力を備えた女性は、クレオパトラだけではありません。
本展の注目作品として何度もご紹介してきたのが「アメンヘテプ3世の王妃ティイのレリーフ」(ブリュッセル、王立美術歴史博物館蔵)。
ついに本物に会えました! 日本初公開です!!
日本でこのレリーフをご覧になるのを楽しみにされていた近藤二郎教授(本展監修者)、内覧会時の作品解説はいつも以上にアツイ解説となりました。

日本を代表するエジプト学の研究者をも虜にしてしまう王妃ティイの魅力、恐るべし。
「小顔だねー」と、女性ならときめかずにはいられない言葉を一身に浴びていたのが、こちらの作品。

王妃の頭部
テル・アル=アマルナ出土
新王国・第18王朝時代 アクエンアテン王治世(前1351~前1334年頃)
ベルリン・エジプト博物館蔵
アメンヘテプ4世の王妃ネフェルトイティ(ネフェルティティ)の像とも、別の王妃の像とも考えられています。
ポスターやチラシにも登場している作品なので、目にされた方も多いのではないでしょうか。
こちらの像、写真で見るイメージよりも小顔なんです。そして美人なんです!!!
ぜひご自身の目で確かめてみてください。
本展は世界14ヵ国約180件もの作品が集結した展覧会です。
他にもご注目いただきたい作品や魅力的な王妃たちが多数!
そんななか、敢えてもうひとつ注目ポイントを挙げるならば、普段目にする機会の少ない個人コレクションの優品も多数出品されているということです。
西アジアの考古学が専門の、本展の担当研究員も「今まで本物を見たことがなかったけど、かなり良いもので驚いた!!」と興奮気味に語っていました。

青色彩文土器(魚)
新王国・第18王朝時代(前1550~前1292年頃)
アル・タニコレクション
今後、こちらのブログで展覧会の見どころを研究員が(そしてトーハクくんが)どんどん紹介していきます。
どうぞご期待ください。

平成館ラウンジには、撮影スポットを設けています。
ご来館の記念にどうぞ!
カテゴリ:news、2015年度の特別展
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posted by 高桑那々美(広報室) at 2015年07月13日 (月)
今や日本のアニメーション界を牽引しているといっても過言ではない、細田守監督作品と東京国立博物館は少なからぬ縁があります。細田監督の名を世に広く知らしめた珠玉の名作『時をかける少女』(『時をかける少女』製作委員会2006)では、主人公のおば(原作小説の筒井康隆・著「時をかける少女」の主人公)が、博物館に勤めていますが、まさに東京国立博物館が映画の舞台になっています。また重要な意味を持った「絵」も映画のなかで本館の展示室に展示されました。

『時をかける少女』 ©「時をかける少女」製作委員会2006
そして昨年10月10日、11日には「博物館で野外シネマ」で『時をかける少女』が上映され多くの方々がつめかけました。上映後には作中場面に登場した博物館のあちこちを、実際にご覧いただく時間があり、たくさんの方々に総合文化展をご覧いただくことになりました。

「博物館で野外シネマ」チラシと上映時の風景(2014年10月10日(金)、 11日(土) 開催)
そしてこの7月11日(土)には、スタジオ地図が贈る細田守監督の最新作である「バケモノの子」が封切りとなります。映画に登場するバケモノたちは、みな刀を持っていますが、実は主人公の熊徹(くまてつ)と九太(きゅうた)が持つ刀は、東京国立博物館の所蔵品を参考としています。当館の刀剣を専門とする研究員が、登場人物の力強さなど、人物設定に応じた刀剣を提案したのです。

『バケモノの子』 ©2015 B.B.F.P

参考にされた刀剣
朱漆打刀(しゅうるしうちかたな)(重要文化財「刀 無銘元重」の拵(こしらえ))
安土桃山時代~江戸時代・16~17世紀 東京国立博物館蔵

溜塗打刀(ためぬりうちがたな )(明智拵(あけちこしらえ))
室町時代・16世紀 東京国立博物館蔵
ともに本館5・6室で7月28日(火)から10月12日(月・祝)まで展示されます。
このように東京国立博物館と日本の美術の数々が、細田監督の作品にとりあげられているのです。日本を代表する細田作品を堪能されたら、その作品世界に取り上げられた東京国立博物館の文化財にもぜひ、ご興味を持っていただけましたら幸いです。
細田守監督作品に関わる参考情報
1. 日本テレビ系の「金曜ロード SHOW!」にて、7月17日(金)午後9時からは『時をかける少女』が放送されますので、ぜひアニメーション世界で登場する東京国立博物館をあらためてご覧ください。
なお本日7月10日(金)午後9時からは前作『おおかみこどもの雨と雪』が放送されます。
2.渋谷ヒカリエの9Fヒカリエホール・ホールA(7月24日(金)~8月30日(日))にて『バケモノの子』展が開催され、細田守監督の作品世界を体験できます。
3. 雑誌『SWITCH』(Vol.33 No.7)では「細田守 冒険するアニメーション」特集が組まれ、そこで本ブログ執筆者が細田監督作品と東京国立博物館の所蔵品をはじめとした日本絵画の関わりを解説しました。
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posted by 松嶋雅人(平常展調整室長) at 2015年07月10日 (金)
特別展「鳥獣戯画ー京都 高山寺の至宝ー」20万人達成&開館延長決定!
特別展「鳥獣戯画ー京都 高山寺の至宝ー」(4月28日(火)~6月7日(日)、平成館)は、6月2日(火)に20万人目のお客様をお迎えしました。
ご来場いただいた皆様に、心より御礼申し上げます。
20万人目のお客様は、横浜市在住・中学3年生の伊藤聖さん。
本日、横浜は開港記念日で学校がお休みということで、お母様を誘ってご来館されたとのこと。
伊藤さんには、東京国立博物館・松本伸之副館長より、記念品として特別展図録と展覧会場限定オリジナルクッションなどを贈呈しました。

伊藤聖さん(中央)と松本副館長(右)、左はお母様のやよいさん
東京国立博物館 展覧会会場前にて
美術館が好きで普段からよく行かれているという伊藤さん。
「鳥獣戯画は教科書などでよく知っている絵。学校に貼られたポスターで展覧会のことを知って、開幕前からずっと見たいと思っていた。紙に印刷されたものと本物では違いがあると思うので楽しみ。」
とお話くださいました。
特別展「鳥獣戯画ー京都 高山寺の至宝ー」もいよいよ今週末6月7日(日)までとなりました。
連日大変たくさんのお客様にご来館をいただいており、
6月2日(火)~4日(木)の開館時間を1時間延長し、18時閉館とすることとなりました。
会期末までの開館時間は下記のとおりとなります。
6月2日(火)9:30~18:00 ※1時間延長(特別展のみ)
6月3日(水)9:30~18:00 ※1時間延長(特別展のみ)
6月4日(木)9:30~18:00 ※1時間延長(特別展のみ)
6月5日(金)9:30~20:00 ※通常通り
6月6日(土)9:30~18:00 ※通常通り
6月7日(日)9:30~18:00 ※通常通り ※最終日
*入館は閉館時間の30分前まで。
会場は大変混雑しており、観覧まで長時間お待ちいただく場合がございます。
ご来場の際は十分に時間の余裕を持っておこしください。
混雑の状況は、ツイッターアカウント@chojugiga_uenoやハローダイヤル(03-5777-8600)でもご案内しています。
皆様のご来館をお待ちしています。
カテゴリ:news、2015年度の特別展
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posted by 田村淳朗(広報室) at 2015年06月02日 (火)