王羲之書法の残影-唐時代への道程- その1
年明け早々、トーハクは書の展覧会はなざかり。平成館では特別展「顔真卿 王羲之を超えた名筆」が、東洋館8室では書道博物館との連携企画「王羲之書法の残影-唐時代への道程-」が、それぞれ絶賛開催中です!
さて、タイトルを見てすでにお気づきかもしれませんが、実はこの2つの展覧会、すごーく密接な関係にあります。王羲之が活躍した東晋時代と、顔真卿が活躍した唐時代は、書が最も高い水準に到達したツインピークスであり、数多くの名品が誕生しました。この東晋と唐とを結ぶ架け橋となるのが、439年から589年までの150年に及ぶ南北朝時代です。
「王羲之書法の残影-唐時代への道程-」では、この南北朝時代の書を中心に、王羲之・王献之から唐時代までのみちのりをたどりながら、唐時代の華やかな書が生まれたワケを解き明かしていきます。そして「顔真卿 王羲之を超えた名筆」をご覧になっていただくと、より理解が深まる、という仕組みになっているのです。
それでは、連携企画「王羲之書法の残影-唐時代への道程-」の内容を、章ごとにチラッと紹介しましょう。題して、東晋時代と唐時代をつなぐ虹の架け橋、珠玉のきらめき!
第1章 王羲之・王献之とその周辺
王羲之は、先進的な書体の中に深遠な表現を盛り込み、当時の書の水準を格段に引き上げました。その息子である王献之もまた、父に負けないくらい華やかな表現を得意としました。父子は東晋時代を代表する二大能書として、後世に多大な影響を与えます。
これぞ天下第一行書!
定武蘭亭序-呉炳本-(部分) 王羲之筆
東晋時代・永和9年(353)
東京国立博物館蔵(東博全期間展示)
第2章 南朝の書
南朝では、宋・斉・梁・陳の4つの王朝が興亡し、政治的にも文化的にも東晋の影響を受け継いでいました。宋・斉では王献之がもてはやされましたが、梁の武帝が王羲之を評価して以降、王羲之の書がナンバーワンに返り咲きました。
世の中は王献之モード!
草書栢酒帖(部分) 王慈筆
宋~斉時代・5世紀
東京国立博物館蔵(東博全期間展示)
第3章 北朝の書
北朝では、北魏の王朝が長い間君臨しました。北魏の書は、洛陽遷都のあとさきで大きな変貌を遂げます。洛陽遷都後は漢化政策が推し進められ、先進的な南朝の書法を取り入れながら、野趣あふれる力強い理知的な書を生み出しました。
龍門造像記のきらめき
牛橛造像記(部分)
北魏時代・太和19年(495)
東京国立博物館蔵(東博全期間展示)
第4章 肉筆にみる書風の変遷
20世紀初頭、敦煌などから大量の肉筆写本が発見され、楷書が形成される過程をつぶさにみることができるようになりました。南朝の肉筆は、王羲之の影響が色濃い優雅な書風、北朝の肉筆は雄偉で構築性に富んだ書風です。
肉筆もやっぱり龍門っぽいです
大般涅槃経巻第四十(部分)
北魏時代・正始2年(505)
台東区立書道博物館蔵(書博後期展示)
第5章 隋から唐へ
陳を滅ぼして天下を統一した隋王朝は、北朝の出身者が多くを占めていましたが、書法を重視した隋においては、南北それぞれの書風の良さが認識され、両者の書風は急速に融合します。そして唐の太宗皇帝のもとに、極めて高いレベルの書法が出現するのです!
南と北が融合っ!
龍蔵寺碑(部分)
随時代・開皇6年(586)
台東区立書道博物館蔵(書博全期間展示)
…さて、この続きを知りたいかたは、ぜひ「顔真卿 王羲之を超えた名筆」もご一緒にご鑑賞ください!唐の都がなぜ世界の中心となりえたか、そのヒミツがきっとわかります。
図録
王羲之書法の残影-唐時代への道程-
編集・編集協力:台東区立書道博物館、東京国立博物館
発行:公益財団法人 台東区芸術文化財団
定価:1,000円(税込)
ミュージアムショップにて販売
※台東区立書道博物館でも販売しています。
図録
王羲之書法の残影-唐時代への道程-
編集・編集協力:台東区立書道博物館、東京国立博物館
発行:公益財団法人 台東区芸術文化財団
定価:1,000円(税込)
ミュージアムショップにて販売
※台東区立書道博物館でも販売しています。
週刊瓦版
台東区立書道博物館では、本展のトピックスを「週刊瓦版」という形で、毎週話題を変えて無料で配布しています。トーハク、書道博物館の学芸員が書いています。展覧会を楽しくみるための一助として、ぜひご活用ください。
関連展示
特別展「顔真卿 王羲之を超えた名筆」2019年2月24日(日)まで
東京国立博物館平成館にて絶賛開催中!
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posted by 鍋島稲子(台東区立書道博物館主任研究員) at 2019年01月18日 (金)