本館 特別1室
2008年11月5日(水) ~ 2008年12月14日(日)
料紙とは、一般に書に用いる紙をさします。すでに奈良時代には、「漉き染め(すきぞめ)」「吹き染め(ふきぞめ)」などの染紙や、金や銀の細かい箔を散らしたものなど、美しく飾られた料紙がありました。このような紙を、装飾料紙とよんでいます。
平安時代には、和歌・物語などにふさわしい優雅で繊細な趣のある紙が求められました。型文様を施した雲母(きら)刷り、ろう箋(せん)などの舶載の唐紙(からかみ)、蝶・鳥の下絵や、漉(す)き模様など、さまざまな意匠をこらした装飾料紙は、王朝貴族たちの感性を今に伝えるものです。12世紀に入ると、和製の唐紙が制作され、装飾の粋を極めた「本願寺本三十六人家集」や、善美の限りを尽くした「平家納経」が登場し、装飾料紙の最盛期が訪れました。鎌倉時代から室町時代にかけてもこれらの技法は受け継がれ、主に金銀泥や彩色による下絵や、型紙を用いた「箔絵(はくえ)」などが発展します。
室町時代以降、茶道が盛んになるにつれて古筆のブームが起こり、もとは巻子(かんす)装や冊子装であった文学作品、写経などが、鑑賞のために切断され、 掛幅(かけふく)装や手鑑(てかがみ)(筆跡のアルバム)などに改められました。今回は、こうした古筆の名品や、もとの体裁をほぼ伝えている国宝「元永本古今和歌集」など、華麗な装飾料紙の世界を紹介します。