能面 顰
「元休打」朱書 江戸時代・17~18世紀
本館 9室
2025年6月24日(火) ~ 2025年8月24日(日)
能「土蜘」は、土蜘蛛の精が紙製の蜘蛛糸を、派手に舞台に投げ広げる演出で人気の五番目物(切能)です。もともと土蜘蛛とは、大和朝廷に服属しない未開の土着民の蔑称でしたが、能では源頼光に憑く土蜘蛛の精という役柄で登場します。
土蜘蛛の精のような鬼神を演じる際には、装束の型が決まっています。「顰」「飛出」「癋見」といった鬼神面をつける場合、金襴や錦でできた「法被」と呼ばれる広袖の上衣に、やはり金襴を用いた「半切」と呼ばれる大きい襞の入った袴を着用します。鬼神の場合には、雲板や輪宝、槌車、雷文や立涌文など、力強い模様が選ばれます。一方、土蜘蛛の精に襲われる源頼光は、病に伏した若武者ですから「長絹」と呼ばれる薄物でできた優雅な上衣を着け、その人柄を象徴します。また、頼光の看病をよそおって現れる怪しげな女性、胡蝶は、美しい唐織に「万媚」と称する妖艶な表情の面をつけて現れます。
能装束の素材と模様は、役柄の性格を演出する重要な要素となっています。江戸時代になると京都・西陣において急速に織物技術の発達し、多彩な模様を織り表した能装束のデザインに大きく貢献したのです。
指定 | 名称 | 員数 | 作者・出土・伝来 | 時代・年代世紀 | 所蔵者・寄贈者・列品番号 | 備考 | |
能面 万媚 | 1面 | 上杉家伝来 | 江戸時代・17~18世紀 | C-1484 | |||
おすすめ | 唐織 紅淡茶段菊薄蝶模様 | 1領 | 江戸時代・18世紀 | I-2001 | |||
鬘帯 紅地撫子模様 | 1筋 | 奈良・金春家伝来 | 江戸時代・19世紀 | I-3317 | |||
長絹 縹地桐模様 | 1領 | 奈良・金春家伝来 | 江戸時代・18世紀 | I-3525 | |||
おすすめ | 厚板唐織 白地菊唐草模様 | 1領 | 上杉家伝来 | 江戸時代・18世紀 | I-2866 | ||
おすすめ | 能面 顰 | 1面 | 「元休打」朱書 | 江戸時代・17~18世紀 | C-129 | ||
赤頭 | 1頭 | 奈良・金春家伝来 | 江戸時代・19世紀 | I-3318 | |||
法被 紺地雲輪宝模様 | 1領 | 江戸時代・19世紀 | 文化庁蔵 | ||||
おすすめ | 厚板 藍萌黄段槌車鱗模様 | 1領 | 奈良・金春家伝来 | 江戸時代・18世紀 | I-3217 | ||
半切 紅地亀甲繋火焔太鼓模様 | 1腰 | 江戸時代・18世紀 | 文化庁蔵 | ||||
おすすめ | 能狂言絵巻(下巻)《土蜘》 | 1巻 | 筆者不詳 | 江戸時代・18世紀 | A-10185-3 | 前期(6/24~7/21)、後期(7/23~8/24)、巻替(7/22) |