国宝 渓陰小築図(部分)
太白真玄序・大岳周崇ら六僧賛
室町時代・応永20年(1413)
京都・金地院蔵
本館 2室
2023年5月9日(火) ~ 2023年6月4日(日)
室町時代初めの禅僧たちの間で大流行した、「詩画軸」の代表例として知られる作品です。
詩画軸とは、画面の下方に絵が描かれ、余白部分を埋め尽くすように漢詩文が書き込まれた形式をいいます。主要なテーマとしては、中国の古詩(こし)を典拠として友人への言葉を贈る「詩意図(しいず)」や、幽遠な山水のなかに書室をあらわした「書斎図」などがあります。
この作品は、応永20年(1413)に制作された現存最古の書斎図です。南禅寺の子璞(しはく)という僧の書斎が「渓陰」と名付けられたのを祝って制作されたもので、言ってみれば、新築祝いのために友人たちから贈られた「絵入りの寄せ書き」です。
文筆に秀でた太白真玄が序文を書き、大岳周崇(だいがくしゅうすう)など6人の著名な禅僧が賛を寄せています。絵を描いたのは子璞の親友の画家で、素朴さの勝った描写が時代の古さをよく示しています。
画面の下方には、人里離れた山水のなかに、1軒の茅屋(ぼうおく)の姿が描かれています。この建物が新築の書斎かと思いきや、実はこの情景はまったく虚構のもの。現実には騒がしい市中に身を置きながら、作品内では、俗世間を離れた隠遁(いんとん)の場としての書斎を描いているのです。
太白が序文で「心の画」とも評しているように、書斎図は、隠遁に憧れる禅僧たちの理想の心象風景を描いたものといえるでしょう。
指定 | 名称 | 員数 | 作者・出土・伝来 | 時代・年代世紀 | 所蔵者・寄贈者・列品番号 | 備考 | |
おすすめ | 国宝 | 渓陰小築図 | 1幅 | 太白真玄序・大岳周崇ら六僧賛 | 室町時代・応永20年(1413) | 京都・金地院蔵 |