中国の書跡 レジェンドの筆跡—書の巨匠と歴史上の偉人
-
紀泰山銘（部分） 玄宗筆 中国 唐時代・開元14年(726) 安藤太郎氏寄贈
東洋館 8室
2020年8月18日（火） ～ 2020年9月22日（火・祝）歴代の中国で社会の中核を担った貴族や士大夫(したいふ)たちは、読書や詩文と同様に、教養として書を身につけていました。卓越した様式を築いた能書に限らず、高い精神性や優れた人格、諸方面の功績などが評価された人物の書もまた尊ばれました。
東晋時代の貴族であった王羲之(おうぎし)は、隷書から派生した草書や行書の表現を芸術の域にまで昇華させ、名声を博しました。唐(とうの)太宗(たいそう)の崇拝を背景に、石碑の文字に使われるほど王羲之の書法は規範化され、不動の地位を獲得したのです。一方、唐時代後半に、従来とは異なる美意識のもとに革新的な表現を創出したのが顔(がん)真(しん)卿(けい)です。主君と親に身を尽くした人格と相俟って、その書は北宋時代以降、高く評価されました。顔真卿を尊重した北宋時代の蔡(さい)襄(じょう)は酷似する字姿の書を残しています。歴代屈指の文人で、師弟の間柄であった蘇軾(そしょく)と黄庭(こうてい)堅(けん)もまた、顔真卿を信奉して影響を受けましたが、両者の書の趣は大きく異なっています。
書の巨匠や歴史上の偉人といったレジェンドの筆跡は、実に多彩です。筆者に思いを馳せていただきながら、その字姿をご堪能いただけますと幸いです。
| 指定 | 名称 | 員数 | 作者・出土・伝来 | 時代・年代世紀 | 所蔵者・寄贈者・列品番号 | 備考 | |
| 泰山刻石 | 1帖 | 李斯筆 中国 | 秦時代・前219年 | TB-764 | |||
| おすすめ | 定武蘭亭序（犬養本） | 1帖 | 原跡＝王羲之筆 中国 | 原跡＝東晋時代・永和9年(353) | 個人蔵 | ||
| 集王聖教序 | 1帖 | 王羲之筆 中国 | 唐時代・咸亨3年(672) | 江川吟舟氏寄贈 TB-1633 | |||
| 洛神賦十三行 | 1帖 | 原跡＝王献之筆 中国 | 原跡＝東晋時代・4世紀 | 高島菊次郎氏寄贈 TB-1360 | |||
| おすすめ | 紀泰山銘 | 1巻 | 玄宗筆 中国 | 唐時代・開元14年(726) | 安藤太郎氏寄贈 TB-116 | ||
| 祭姪文稿 | 1帖 | 原跡＝顔真卿筆、文徴明編 中国 | 原跡＝唐時代・乾元元年(758) | 高島菊次郎氏寄贈 TB-1382-4-1 | |||
| 大唐中興頌 | 2帖 | 顔真卿筆 中国 | 唐時代・大暦6年(771) | 市河三兼氏寄贈 TB-190 | |||
| 行書黄州寒食詩並跋 | 1帖 | 原跡＝蘇軾筆,黄庭堅筆 董其昌編 中国 | 原跡＝北宋時代・11～12世紀 | 高島菊次郎氏寄贈 TB-1383-12-1 | |||
| 行書尺牘「玉候帖」 | 1枚 | 范成大筆 中国 | 南宋時代・12世紀 | 高島菊次郎氏寄贈 TB-1210-12 | |||
| 行書題米敷文瀟湘図 | 1帖 | 原跡＝朱熹筆、董其昌編 中国 | 原跡＝南宋時代・淳熙6年(1179) | 高島菊次郎氏寄贈 TB-1383-14-1 | |||
| 孔子廟堂碑（重刻） | 1幅 | 虞世南筆 中国 | 唐時代・武徳9年(626) | TB-350 | |||
| 皇甫誕碑 | 1幅 | 欧陽詢筆 中国 | 唐時代・7世紀 | TB-351 | |||
| 雁塔聖教序 | 2幅 | 褚遂良筆 中国 | 唐時代・永徽4年(653) | TB-354 | |||
| おすすめ | 顔氏家廟碑 | 2幅 | 顔真卿筆 中国 | 唐時代・建中元年(780) | TB-366 | ||
| おすすめ | 万安橋記 | 2幅 | 蔡襄筆 中国 | 北宋時代・嘉祐5年(1060) | TB-230 | ||
| 草書七言絶句軸 | 1幅 | 倪元璐筆 中国 | 明時代・17世紀 | TB-1196 | |||
| 行書七言律詩軸 | 1幅 | 乾隆帝筆 中国 | 清時代・乾隆16年(1751) | TB-1454 | |||
| 篆書七言聯 | 2幅 | 左宗棠筆 中国 | 清時代・19世紀 | TB-824 | |||
| 行書五言二句軸 | 1幅 | 康有為筆 中国 | 中華民国時代・20世紀 | 高島菊次郎氏寄贈 TB-1342 | |||
| 行書二字軸「博愛」 | 1幅 | 孫文筆 中国 | 中華民国時代・20世紀 | 加藤文子氏寄贈 TB-1443 |