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140周年ありがとうブログ

三星堆の青銅器にありがとう

私はトーハクでおもに中国考古の展示を担当しています。
中国の考古学を研究したいと思うようになったのは、学部1年生の夏休みに中国の四川省博物館を訪ねたことがきっかけでした。
そこにはこれまで見たこともない青銅製の仮面が展示されていました。

突目仮面 殷時代・前13-前11世紀 高82.5 幅77.4cm
突目仮面 殷時代・前13~前11世紀 高82.5 幅77.4cm

飛び出した目、耳元まで裂けた大きな口、額から突出した扁平な形の飾り。
それは四川省にある三星堆(さんせいたい)遺跡から出土した突目仮面(とつもくかめん)という青銅器でした(※)。

中国の青銅器といえば壺などの容器しか見たことのなかった私にとって、突目仮面の奇抜な造形はあまりにも大きな衝撃でした。
同時に、中国とは思っていたよりはるかに多様な世界であるということを思い知りました。
もしもこの青銅器に出会わなければ、中国考古学に関心をもつことも、トーハクで中国考古の展示を担当することもきっとなかったことでしょう。
私を中国考古学の世界に導いてくれた突目仮面に感謝です。

そして、今秋トーハクでこの恩人(?)と18年ぶりに再会できることになりました。
日中国交正常化40周年・東京国立博物館140周年を記念して開催される特別展「中国 王朝の至宝」で展示されることが決まったのです。
会場を訪れるみなさまがそれぞれの「未知なる中国」に出会い、目からウロコを落としていただければ幸いです。

来年1月2日にリニューアルオープンする東洋館にもたくさんの中国の作品を展示しますので、こちらにも足を運んでいただければいっそうの幸いです。

特別展「中国 王朝の至宝」のポスターと筆者
特別展「中国 王朝の至宝」のポスターと筆者

※突目仮面は1994年8月当時、四川省博物館に展示されていましたが、現在は三星堆博物館の所蔵品となっています。

 

カテゴリ:2012年8月

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posted by 川村佳男(保存修復室) at 2012年08月07日 (火)