平成館 特別展示室第1室・第2室
2007年1月23日(火) ~ 2007年3月18日(日)
ニュージーランドの先住民マーオリの美術を紹介します。独特の木彫芸術、民族の誇りを示すカヌー、武勇の象徴である武器、ポウナム(軟玉)のペンダントや鳥の羽のマントなど、同館所蔵の約120件の名品を展示いたします。
タイアハ・クラ(首長の戦闘用杖) 「テ・ロゴタケタケ」
ニュージーランド国立博物館テ・パパ・トンガレワ蔵
平成館 特別展示室第1室・第2室
2007年1月23日(火) ~ 2007年3月18日(日)
ニュージーランドの先住民マーオリの美術を紹介します。独特の木彫芸術、民族の誇りを示すカヌー、武勇の象徴である武器、ポウナム(軟玉)のペンダントや鳥の羽のマントなど、同館所蔵の約120件の名品を展示いたします。
■ 開催概要 |
会 期 | 2007年1月23日(火)~3月18日(日) | ||||||
会 場 | 東京国立博物館 平成館 特別展示室第1・2 室 (上野公園) | ||||||
開館時間 | 9:30~17:00 (入館は閉館の30分前まで) | ||||||
休館日 | 月曜日(ただし2007年2月12日(月・休)は開館、翌13日(火)は休館。) | ||||||
観覧料金 | 平常料金でご観覧いただけます。 一般600円(500円)、大学生400円(300円) 高校生以下、満70歳以上の方は無料
|
||||||
交 通 | JR上野駅公園口・鶯谷駅より徒歩10分 東京メトロ銀座線・日比谷線 上野駅 、千代田線 根津駅、京成電鉄京成上野駅より徒歩15分 |
||||||
主 催 | 東京国立博物館、ニュージーランド国立博物館テ・パパ・トンガレワ | ||||||
後 援 | ニュージーランド大使館、ニュージーランド政府観光局(http://www.newzealand.com/) | ||||||
協 賛 | トヨタ輸送株式会社、トヨフジ海運株式会社 | ||||||
協 力 | ニュージーランド航空(http://www.airnewzealand.com/)、松下電工株式会社 | ||||||
お問い合わせ | 03-5777-8600 (ハローダイヤル) | ||||||
■ 関連事業 |
講演会 | ||||
記念講演会「マーオリはどこから来たか」 平成館 大講堂 2007年2月3日(土) 13:30~15:00 講師:国立民族学博物館教授 印東 道子 氏 |
||||
日本ニュージーランド学会との連携講演会 | ||||
平成館 大講堂 2007年2月10日(土) 13:30~15:00 「マーオリのKORU―過去と未来を結ぶもの―」 講師:武蔵大学社会学部教授 内藤 暁子 氏 「クジラの島の少女の世界」 講師:弘前大学人文学部助教授 澤田 真一 氏 |
||||
パフォーマンス | ||||
カパ・ハカ パフォーマンス 平成館 ラウンジ 2007年1月23日(火) 10:30~11:00、14:00~14:30、15:30~16:00 2007年1月24日(水) 10:30~11:00、14:00~14:30、15:30~16:00 2007年1月25日(木) 10:00~10:30、11:30~12:00 ※JR上野駅ガレリアでも、2007年1月23日(火)・24日(水)の各日12:00~12:30に開催します。 |
||||
ウィーバー(編物)とカーバー(木彫)の実演 | ||||
平成館 ラウンジ 2007年1月23日(火)~27日(土) 10:30~17:00(随時休憩あり) | ||||
映画上映 | ||||
平成館 大講堂 2007年2月6日(火)、7日(水)、8日(木)、9日(金)、11日(日)、12日(月・休) 各日2回 10:30~、14:30~ 観覧料金:無料(ただし当日の入館料は必要です) マーオリの少女を主人公とした珠玉の作品。民族の伝統と現代社会のはざまでゆれるマーオリの人々を描いています。展覧会でご覧いただく作品と同種のものが映画のさまざまなシーンに登場します。ぜひ展覧会とあわせてご鑑賞ください。
|
||||
■ ワークショップ |
マーオリのデザイン 平成館1階 ガイダンスルーム 2007年1月23日(火)~3月18日(日) 参加自由 無料(当日の入館料は必要) 対象:小・中・高校生
|
|
■ 同時期開催 |
特別展 「悠久の美―中国国家博物館名品展」 会期:2007年1月2日(火)~2月25日(日) 会場:平成館 特別展示室第3・4室 観覧料:特別展 「悠久の美―中国国家博物館名品展」の観覧券が必要です。 中国国家博物館が所蔵する中国考古・工芸の優品ばかり61件で構成する展覧会。中国文明の精髄をゆったりとご鑑賞いただきます。
|
|
「博物館に初もうで」 会期:2007年1月2日(火)~1月28日(日) 観覧料:平常料金でご覧いただけます 新春特別展示「亥と一富士二鷹三茄子」などの展示と、1月2日・3日は和太鼓や獅子舞をはじめ伝統芸能もお楽しみいただける新春企画です。にっぽんのお正月を東博で。国宝 松林図屏風も公開されます。
|
|
■ 主な展示作品 | *すべてニュージーランド国立博物館テ・パパ・トンガレワの所蔵品です。 |
|
|
伝承によると、マーオリ人はふるさとハワイキからカヌーに乗ってニュージーランドに移住しました。ニュージーランドにマーオリ人が定住して以来の初期の作品には、太平洋の先祖たちの伝統を垣間見させるような一面があります。
トキ(手斧の刃)や石製ペンダント、クジラの歯のペンダントなどは、太平洋の熱帯地域の出土品とも似ています。しかし、ガーララ(トカゲ)のペンダントに見られるように、熱帯地域では見られなかったような顔の表現はマーオリの独自性のあらわれであり、これはその後さらに発展していきます。 古代の宝にマーオリ美術の始まりをみてみましょう。 |
ネックレス ガー・カーカノ期~テ・ツィプガ期、1100~1500年 ガーツィ・ヘイ族、ガーツィ・ファナウガ族 コロマンデル地方オピト浜 サメの歯 ホホジロザメの歯を加工した希少な品。きれいに並ぶよう根元が細工されています。ホホジロザメは海の神タガロアの子孫として、強さ、速さ、獰猛さのゆえに畏敬されています。 |
ガーララ(トカゲ)形ペンダント ガー・カーカノ期~テ・ツィプガ期、1100~1500年 部族不明 ギズボーン地方 クジラの骨 クジラの骨で作られています。動物をかたどった装飾品には動物のマウリ(霊性)がやどっていると考えたマーオリ人はガーララ(トカゲ)をお守りとしたのでしょう。動物形の装身具はニュージーランドでも熱帯の島々でも珍しいものです。 |
|
|
マーオリ人は、海からやってきたという彼らの来歴を示すとともに、生業の道具でもあるカヌー、食料や貴重品を納めたパータカ(高床倉庫)、そして儀式や会議のためのファレヌイ(集会所)を、イウィ(部族)のアイデンティティの象徴と考えました。
それらを渦巻文で飾り、先祖の姿を彫り出して部族の絆を表現しました。目を見開き、舌を出した人物像は、マーオリ美術のあらゆるところに見られます。人物像の目にアワビの貝殻を用いる独特の工夫もしています。
貴重品を入れるためのワカフイア(宝箱)、来航したヨーロッパ人を驚嘆させたター・モコ(入れ墨)も見逃せません。
また、古い楽器を展示し、会場にその音色を流します。天の父ラギヌイがメロディを、地なる母パパツーアーヌクがリズムを作ったというマーオリの調べもお楽しみください。
|
タウイフ(カヌーの船首) テ・プアーワイタガ後期~テ・フリガ I 初期、1500~1900年 ガーツィ・トア族(推定) 北島南部 木、パーウア貝(アワビ)の殻 ふたつの渦巻は天の神ラギヌイと地の神パパツーアーヌクを意味しています。マーオリの各イウィ(部族)は、先祖がニュージーランドに着いたときに乗っていたワカ(カヌー)の名を伝承しています。 |
ポウ・トコマナワ(中心柱の男性像) テ・フリガ I 期、1800~1900年 ガーツィ・カフグヌ族 ワイロア地方 トータラ樹、彩色 ポウトコマナワとは建物の中央の柱です。その根元に彫り出された人物像は、部族にとって重要な先祖の姿です。男性像は生殖力を、女性像は生命を生み出し保つことを表します。装身具の使い方や入れ墨なども見てとれます。 |
パータカ(高床倉庫) テ・フリガ I 期、1839年 ガーツィ・ピキアオ族 テ・マタラ他作 トータラ樹、パーウア貝(アワビ)の殻 食料や貴重品を納めたパータカには、細かな彫りが施され、先祖との結びつきを示しています。会場ではパータカとともにファレヌイ(集会所)の前面を実物さながらに組み立てます。その大きさと精巧な浮き彫りをご堪能ください。 |
トキ・ポウタガタ(儀式用の手斧) テ・プアーワイタガ期~テ・フリガ I 初期、1500~1900年 部族不明 木、ポウナム(軟玉)、繊維 ニュージーランド南島で産出するポウナム(軟玉)を用いた儀式用の手斧です。木製の柄がついており、実際の使用方法がわかります。柄にも舌を出した先祖の像が表されています。重要な建物を建てるとき、木材を切る最初の儀式に用いたのでしょう。 |
マタウ(釣り針) テ・フリガ I 期、1800~1900年 部族不明 パーウア貝(アワビ)の殻、木、繊維 いくつかの部品を組み合わせて作っています。アワビの殻の真珠層を用いているので、海中でキラキラと輝き、疑似餌の役割を果たします。アワビを利用したのは真珠貝が取れないニュージーランドでの独自の工夫です。 |
|
|
マーオリ人は武勇を重んじました。マーオリの伝説にはイウィ(部族)の間の抗争が語られ、来航したヨーロッパ人とも果敢に戦いました。その勇敢な民族性はラグビーの世界最強チーム、オールブラックスにまで受け継がれていると言ってよいでしょう。
接近戦で勝利することを武勇の証しとしたマーオリ人は、メレやパツのような短い棍棒で戦うことが多く、卑怯な飛び道具は用いませんでした。
展示作品の中には、それを所持した首長の名がわかるものもあり、イウィの歴史にとって欠かせない名品ばかりです。
|
タイアハ・クラ(首長の戦闘用杖) 「テ・ロゴタケタケ」 テ・フリガ I 初期、1800~1900年 ガーツィ・イラ・カイ・プータヒ族 木、カーカー鳥の羽、犬の毛、マオランの繊維、イグサ、パーウア貝(アワビ)の殻 タイアハはマーオリの最も格式の高い武器のひとつです。和平の記念に交換されたこともあります。「テ・ロゴタケタケ」と命名されたこのタイアハ・クラも、1819年ごろに2部族間の対立に終止符を打つため、そして1847年ごろには、植民地警察隊の高官に贈られました。 |
メレ・ポウナム(軟玉製棍棒) 「タフィト・フェヌア」 テ・プアーワイタガ期、1500~1800年 ムアウーポコ族、ガーツィ・イラ族、ガーツィ・トア族、ガーツィ・カフグヌ族 ポウナム(軟玉) ポウナム(軟玉)で作られた、やや扁平な棍棒です。「タフィト・フェヌア」と名付けられ、最初、ガーツィ・イラ族の首長テ・ケケレグが所持していました。彼と母はガーツィ・トア族の首長テ・ラギハエアタによって処刑されそうになりましたが、母の辞世の歌に心打たれたテ・ラギハエアタが2人の命を救うと、テ・ケケレグは感謝の印としてこの「タフィト・フェヌア」をテ・ラギハエアタに譲りました。 |
|
|
マーオリ人の先祖たちは、太平洋の熱帯の島々で裸で生活していましたが、寒冷なニュージーランドではそうもいきません。マーオリ人はムカ(亜麻の繊維)をやわらかくして編み、カフ(マント)を作って羽織りました。さらに、ニュージーランド特有の色とりどりの飛べない鳥の羽を編みこんで衣装を飾りました。
これらの伝統技術はヨーロッパ人の来航以後も新たなスタイルを確立して展開しました。今回展示するバッグなどもその一例です。
このほか、ムカを叩くパツ・ムカなどの道具も展示します。
|
カフ・クリー(犬皮のマント) テ・プアーワイタガ期、1500~1800年 ムアウーポコ族、ガーツィ・イラ族、ガーツィ・トア族、ガーツィ・カフグヌ族 ポウナム(軟玉) クリーとはある種類の犬のことをいいます。犬は太平洋の長い旅路以来、マーオリ人の先祖とともに過ごした唯一の哺乳類でした。このマントでは、クリーの皮はハラケケ(マオラン)の丈夫な下地に縫いつけられています。 マントはラガツィラタガ(権力)を、マントを贈ることはカイツィアキタガ(保護)を意味しました。 |
カフ・フルフル(羽のマント) テ・フリガ I 期、1800~1900年 ツーホエ族 マオランの繊維、ケレルー鳥・ツーイー鳥・カーカー鳥の羽 ジグザグの縞模様に見えますが、それぞれ異なる色の鳥の羽を編みこんでいます。実物を間近で見れば、その美しい光沢と豊かな質感に圧倒されることでしょう。 |
|
|
装身具は、身につける人のマナ(威信)や精神の力に関わるもので、頭や首など、体の中でも神聖な部位につけました。
金属を使わなかったマーオリ人にとって、ニュージーランド南島でのポウナム(軟玉)の発見は、彼らの美術に大きな影響を与えました。透明感のある緑の輝きは、マーオリ人の体を飾るために加工されました。
このほか、クジラの骨や蛇紋石、木材も用いられ、アワビの殻の真珠層はここでも大いに活用されました。
これらの装身具は、精巧なタ・モコ(入れ墨)とともにマーオリ人の体を美しく飾ったのです。
|
ヘイ・ツィキ(人間形ペンダント) テ・プアーワイタガ期、1500~1800年 部族不明 ポウナム(軟玉)、パーウア貝(アワビ)の殻、顔料 首をかしげて目を見開き、舌を出した姿がユーモラスなツィキは、マーオリ美術の定番キャラ。眼にはやはりアワビの殻の真珠層が用いられています。 |
ヘル(装飾用の櫛) テ・プアーワイタガ期、1500~1800年 部族不明 クジラの骨、パーウア貝(アワビ)の殻 マーオリ人にとって、頭は人体の中でも最も神聖な部分です。ヨーロッパ人が来航したころ、マーオリの男性は長髪を編んで髻にし、ヘルで飾りました。ここでも小さな人物像が彫り出され、やはりアワビの殻が眼の表現に用いられています。 |
|
|