東洋館 8室
2015年6月30日(火) ~ 2015年8月2日(日)
絵画の中には、優雅な景観の中に人物を描き、人物の周辺に青銅器や陶磁器などの器物を描いた作品がたくさんあります。人物の周辺に何気なく配された器物は、どのような意図のもとに描かれたのでしょうか。
絵画に描かれた器物は、単なる添景描写ではなく、実は描かれた人物の内面や個性を示す、重要な表現の一部でした。そのため画中の器物の形は、実際の器物を想起させるものから、空想に近いものや、あえて倣古の形をとるものなど、実に多様な表現がなされています。
例えば、青錆のついた高雅な青銅器と共に描かれた人物は、古代聖王の世界を理解した文人を、趣味のよい文房具や陶磁とともに描かれた人物は、豊かな教養と洗練された審美眼を身につけた文人であることを示しています。絵画の中に描かれた器物は、当時の生活の一斑を伝えるだけではなく、現実の再現を超えて、人物の高邁な思想や清廉な性格などを示唆する、絵画表現の重要な一部分でもあったのです。
この特集では、絵画と描かれた器物を同時に展示しています。絵画の中の器物に込められた意味に注目しながら、絵画と器物との関係や、画家たちがそこに託した思いを感じていただければ幸いです。