東洋館 8室
2013年8月6日(火) ~ 2013年9月23日(月・祝)
東洋館のリニューアルオープンを記念して、市河米庵(いちかわべいあん)コレクションを展示いたします。
市河米庵(1779~1858)は「幕末の三筆」と称され、多くの門弟を擁した書家・学者です。学問を積む一方で書画や骨董を熱心に収集し、その収蔵品は、日本や中国の書画・拓本・古器物・文房具など、広範な分野に及び、一千余件を数えたと伝えられています。米庵は晩年、それらの豊富な収蔵品の中から、中国の書画や古器物260余件を精選し、『小山林堂書画文房図録(しょうざんりんどうしょがぶんぼうずろく)』を上梓しました。各収蔵品については、材質・法量を記し、入手の経緯や作者の考証に及ぶものもあり、江戸時代の文人コレクションを知る、まさにタイムカプセルのような貴重な資料となっています。
米庵の収蔵品は、その歿後に散佚してしまいましたが、ご令息の市河三兼(いちかわさんけん)氏が再収集に尽力され、明治33年(1900)、東京帝室博物館(東京国立博物館の前身)に寄贈されました。これより先、米庵が昌平黌(しょうへいこう)(現・湯島聖堂)に寄託していた書画・拓本類も、ご令孫の市河三鼎(さんてい)氏によって寄贈され、これが当館の中国書画コレクションの始まりとなりました。
今回は、これらの寄贈品の中から、米庵の図録に掲載されている中国の書画や、硯(すずり)・筆筒(ひっとう)・青銅器など、米庵遺愛の品々を展示いたします。米庵は寝食を忘れて収集に没頭したと伝えられ、所蔵の書画には次の収蔵印を押すものがあります;「米葊捐衣食所聚(米庵の衣食をすててあつめし所)」。江戸時代を代表する文人である米庵が、生涯をかけて集めたコレクション。その独特な世界観をお楽しみください。