国宝 白氏詩巻(部分) 藤原行成筆 平安時代・寛仁2年(1018)
本館 2室
2021年11月30日(火) ~ 2021年12月25日(土)
色変わりの美しい料紙に、『白氏文集(はくしもんじゅう)』巻第65から8篇の漢詩を瀟洒(しょうしゃ)で明るい書風で書き進めています。平安時代の宮廷貴族にとって、このような漢詩文は必須の教養でした。とくに中国・唐時代の白居易(はくきょい、白楽天(はくらくてん))の詩集『白氏文集』が大いにもてはやされ、愛読されていました。
本作は、三跡の一人で和様の書風を完成させた能書(のうしょ)として著名な藤原行成(ふじわらのこうぜい、972~1027)が依頼されて揮毫(きごう)した調度手本(ちょうどてほん)です。いわゆるお習字のお手本とは異なり、宮廷貴族の贈り物に選ばれ、身の回りにおいて鑑賞されたものです。巻末の奥書(おくがき)に「寛仁二年」とあることから、藤原行成の47歳の筆跡であることがわかります。奥書に続けて、行成を始祖とする能書の家系、世尊寺(せそんじ)家の第五代当主・藤原定信(ふじわらのさだのぶ、1088~1154~?)が跋(ばつ)を加え、小野道風(おののとうふう)筆の「屏風土代(びょうぶどだい)」(宮内庁三の丸尚蔵館蔵)とともに、この行成の巻物を購入したことを記しています。また、紙背の継ぎ目には、能書帝として著名な伏見天皇(ふしみてんのう、1265~1317)の花押があり、もとは天皇遺愛の品であったことも伝えています。
奥書で藤原行成は、「経師(きょうじ)」の筆を借りて書いたため普段とは違っており、笑わないでほしい、と述べています。しかし、整った字形、墨の濃淡や行草のバランスも見事であり、行成の本領を発揮した圧巻の筆跡となっています。
指定 | 名称 | 員数 | 作者・出土・伝来 | 時代・年代世紀 | 所蔵者・寄贈者・列品番号 | 備考 | |
おすすめ | 国宝 | 白氏詩巻 | 1巻 | 藤原行成筆 | 平安時代・寛仁2年(1018) | B-2533 |