このページの本文へ移動

特別展「中国山水画の20世紀 中国美術館名品選」 1章 伝統の継承と発展

中国の近代絵画は、巨大な伝統の継承によって発展してきました。文人画を中心とする伝統絵画は、近代画家が乗り越えるべき大きな課題として存在し、絶えず画家の創作の源となりました。 呉昌碩などの海上派は、金石を取り込んだ力強い絵画を創作し、潘天寿は、八大山人や石涛といった明末清初に活躍した個性派画家を再評価して、その創作に生かしました。 ここでは中国の画家たちがいかに伝統絵画の表現を取り込んで創作をおこなっていったかを紹介します。
※作品タイトル、もしくは、画像をクリックすると作品の拡大画像がご覧いただけます。
 

 

 

清朝中期から石に刻まれた書の線(金石味)が尊ばれ、海上派(かいじょうは)を代表する画家・呉昌碩らはこれを積極的に創作に取り込んだ。

この強い線こそは画家の精神を表現しうると考えられ、ここから中国近代絵画の躍動は始まった。

 
呉昌碩
風壑雲泉図(ふうがくうんせんず)
呉昌碩(ごしょうせき) 筆
1918年
中国美術館蔵
 

 

  山水画冊(さんすいがさつ)(12枚のうち2枚)
張大千(ちょうだいせん) 筆 1941年
中国美術館蔵

20世紀中国絵画を代表する画家張大千は、古画の研究、創作などにも多大な功績を残した。

本作は新中国成立以降、台湾(たいわん)に遷居する以前の精品で、石濤(せきとう)など古画の筆墨(ひつぼく)技法を完全に身につけていたことがわかる。初公開作品。

 張大千
 

 

 

潘天寿は呉昌碩(ごしょうせき)に大きな影響を受け、1944年には杭州(こうしゅう)の国立芸術専科学校校長となった。初期の美術史学者としても知られる。

八大山人(はちだいさんじん)や石涛(せきとう)などに学びながら金石味(きんせきみ)のある絵画を得意とした。

 
潘天寿
霊岩澗一角図(れいがんかんいっかくず)
潘天寿(はんてんじゅ) 筆 1955年
中国美術館蔵
 

 

 

呉湖帆は著名な文人である呉大澂(ごたいちょう)の孫で、大コレクター、鑑識家としても知られ、上海で活躍した。その作品は伝統の青緑山水(せいりょくさんすい)を高度に昇華させたものと言える。

本作は廬山(江西(こうせい)省)にある五老峰を描いたもの。

 
呉湖帆
廬山東南五老峰図(ろざんとうなんごろうほうず)
呉湖帆(ごこはん) 筆
1958年
中国美術館蔵
 

 

  錦繡河山図(きんしゅうかざんず)
賀天健(がてんけん) 筆
1952年
中国美術館蔵
 賀天健  

ウィーンで開かれた世界平和会議のために描かれた作品。青緑山水(せいりょくさんすい)は唐代から存在していたが、賀天健はこの技法の復興こそが西洋の油画(ゆが)に匹敵するものだと考えていた。

こうして伝統絵画技法は近代的美術空間のなかで再生を果たしていったのである。

 

1章 伝統の継承と発展     2章 西洋画法との競合     3章 社会・生活への挑戦          このページのトップへ戻る

特別展「中国山水画の20世紀 中国美術館名品選」のページへ戻る