本館 2室
2022年7月5日(火) ~ 2022年7月31日(日)
東京国立博物館は、令和4年(2022)に創立150年を迎えました。この150年の歴史のなかで収集された文化財のなかには、国指定の国宝や重要文化財となっていなくとも素晴らしい作品が数多く収蔵されています。
「150年後、もしくはその先の未来、この国宝室にはどのような作品が展示されているのだろう」。
こういった問いかけから、今年度は「未来の国宝―東京国立博物館 書画の逸品―」というテーマで展示を行なうことにしました。私たち研究員が選び抜いたイチ押しの作品を「未来の国宝」と銘打って、年間を通じてご紹介していくという試みです。
数万件に及ぶ絵画、書跡、歴史資料のなかから選び抜いた、東京国立博物館コレクションの「逸品」をどうぞご堪能下さい。
蝦蟇鉄拐図
雪村周継筆
室町時代・16世紀
「雪舟」に比べると知名度の低い「雪村」ですが、実は知る人ぞ知る、「奇想の画家」の元祖なのです。
そんな雪村の奇天烈な魅力がギュッと詰まっているのがこの作品。画面には、何やら怪しげな二人の人物が描かれています。
向かって右側は鉄拐(てっかい)仙人。空に向かって勢いよく吹き出した息をよく見ると、その先には小さな人影が描かれています。 これは自分の魂。鉄拐はこのように魂を遠くへ飛ばすことができたのでした。
左に描かれるのは蝦蟇(がま)仙人。三本足のヒキガエルを従えて妖術を使ったといいますが、この絵ではまるでモグラのよう。 一本足で懸命に立ち上がる姿に声援を送る蝦蟇仙人の表情は、何とも嬉しそうです。手品のように首がストンと落ちた不思議な表現も、雪村ならではといえます。
元は衝立(ついたて)の表裏であったともいわれる作品で、横幅2メートルを超える巨大な画面は圧倒的な存在感を放ちます。 署名や印章の形式から、雪村が福島県三春を拠点に活躍した、70 ~ 80 歳代の作と推定できる点も貴重といえるでしょう。
エキセントリックな雪村画の真骨頂を示す逸品です。