本館 14室
2016年1月2日(土) ~ 2016年2月28日(日)
新春に因み、末広がりの意匠としてのめでたさや、絵替わりの楽しさに焦点をあてながら、扇散らし文様の作品を集めてご覧いただきます。
扇は「末広」ともよばれる通り、末広がりの形が次第に栄えてゆくことを示す、おめでたい品物です。また扇散らしの文様は、扇の変化に富んだ形や、扇面に描き込まれた図柄(画中画)の面白さが好まれて、鎌倉時代以降、さまざまな工芸品に用いられてきました。化粧道具や文具、香道具などの調度から屏風、釘隠や刀装具、小袖など、実に幅広い分野の作品に扇散らしの意匠を見ることができます。
特に蒔絵の手箱は、化粧道具など身の回りの細々とした道具を収める箱ですが、扇散らし文様の名品が知られています。手箱は居室に飾り置く晴れの調度でもあり、吉祥文様の作品が多く、扇散らしの文様も当時からおめでたい意匠であったことが分かります。
また文様として表された扇面には、さまざまな草花や樹木、水辺や野辺などの景色が描き込まれ、一つの作品の中に同じ扇面画を見ることはほとんどありません。扇面の図柄は皆違っており、画中画をひとつひとつ丹念に見てゆく面白さがあります。
末広がりでめでたいだけでなく、画中の扇面画の様々な主題を見比べるのもまた一興。二つの長所を兼ね備える、一挙両得の扇散らし文様をお楽しみ下さい。