本館 14室
2013年11月19日(火) ~ 2014年2月16日(日)
能と狂言つまり能楽に用いる仮面を作ることを「面(おもて)を打(う)つ」といい、作家を「面打(めんうち)」と呼びます。室町時代に能楽を大成した世阿弥(ぜあみ ?~1443)が著した『申楽談義(さるがくだんぎ)』には、竜右衛門(たつえもん)、赤鶴(しゃくづる)などの面打の名前が名手として挙げられていますが、その伝記は不明で、作者がわかる面もまれです。
安土桃山時代には、豊臣秀吉が能楽に熱中して大名に愛好者が増え、やがて武家の式楽(公の儀式で行なわれる音楽や舞踊のこと)になりました。能や狂言の面の需要が増えたため、面打を世襲する家系が三つ現われました。越前出目家(えちぜんでめけ)、大野出目家(おおのでめけ)、近江井関家(おうみいせきけ)です。彼らの仕事は、能楽の宗家である観世(かんぜ)、金春(こんぱる)、金剛(こんごう)、宝生(ほうしょう)等をはじめ、各地に秘蔵された名作を写すことでした。特に大野出目家初代の是閑(?~1616)と近江井関家四代の河内(?~1657?)は名手として生前から高く評価されています。しかし、二人の作品もまた、後世の面打に忠実に写されたので、真作と判断することは簡単ではありません。ここでは現代の面打、新井達矢氏とともに二人の作を見極め、その特徴をお示しします。