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能「山姥」の面・装束

  • 『厚板 浅葱地三崩鳳凰菱模様 江戸時代・17世紀』の画像

    厚板 浅葱地三崩鳳凰菱模様 江戸時代・17世紀

    本館 9室
    2007年8月21日(火) ~ 2007年10月21日(日)

     山姥(やまんば)と言えば、山に住み怪力を持つ鬼女、日本絵画に描かれるような長い白髪を振り乱した醜女の イメージがあります。能「山姥」に謡われる姿からそのようなイメージが形成されたのでしょう。ただ、能では、旅の一行に宿を与え、遊女の曲舞(くせまい)を所望して自らも舞うなど、人情味があり風情を解する山姥の姿に親しみも感じられます。

      能「山姥」の物語は次の通りです。

     京都に、山姥の生業(なりわい)を曲舞にして舞う、百魔山姥という異名で知られる遊女がいました。能舞台では、遊女・百魔山姥は小面(こおもて)という若い女性の面をつけ、紅入(いろいり)の唐織(からおり)を着用して登場します。遊女・百魔山姥が従者を引き連れて善光寺に参ろうと越後の上路(あげろ)の山を登る途中、日中にもかかわらず突然日が暮れかかります。一行が困っているとどこからともなく紅無(いろなし)の唐織をまとい「深井(ふかい)」「曲見(しゃくみ)」などの中年女性の面をつけた前シテ(前場の主役)・山の女が現れ、自分の家を宿に勧めます。一行が喜ぶと、山の女は「実は自分は山姥である、遊女・百魔山姥の舞は、鬼女でありながら善行を人間に施す善悪不二の山姥を曲舞に謡(うた)うというので、是非ともその舞を見たい、そこで自分の怪力で日をかげらせたのだ」と言い、どこへともなく消え去ります。深い谷の夜が更けると、雪のように白い髪に星のような眼を光らせ、狭丹塗(さにぬり)のように赤い顔をした面をつけ、厚板(あついた)の裾を腰で端折り(壺折(つぼおり))、金襴(きんらん)の半切(はんぎれ:袴の一種)をはいた山姥が再び一行の前に現れました。山姥の所望に応じて遊女・百魔山姥が曲舞を謡いはじめると、それに合わせて山姥は舞います。気分が高揚した山姥は、四季折々の風物をもとめて山めぐりをする自らの生活を舞で再現すると、峰を駆け、谷を越え、山のかなたへと去ってゆくのでした。

     

主な出品作品

*所蔵の表記の無いものは、当館蔵品です。
厚板 浅葱地三崩鳳凰菱模様 江戸時代・17世紀
唐織 紅白段竹菊模様 江戸時代・18世紀