本館 特別1室・特別2室
2016年10月18日(火) ~ 2016年11月27日(日)
歌仙絵とは、優れた歌人の和歌とその肖像を表わしたやまと絵の一つです。平安時代中期、藤原公任(ふじわらのきんとう)が編んだ『三十六人撰(さんじゅうろくにんせん)』にもとづく「三十六歌仙絵」、鎌倉時代前期、後鳥羽院(ごとばいん)が編んだ『時代不同歌合(じだいふどううたあわせ)』にもとづく「時代不同歌合絵」など、多くの歌仙絵が中近世を通じて生み出され、愛好されてきました。
いにしえの歌人の肖像を描く営みは、平安時代末期にさかのぼります。当時、歌聖として崇敬されていた「柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ)像」がその始まりです。鎌倉時代には、「似絵(にせえ)」と呼ばれる新たな肖像表現の形式を取り込みながら展開し、和歌を詠む人々の間で広く制作・享受されるようになりました。
この特集は、宮廷文化の根幹たる和歌に支えられた、歌仙絵の成立と展開をたどるものです。東京国立博物館が誇る中世歌仙絵の全貌をご覧いただくとともに、文化庁、京都国立博物館、九州国立博物館、大倉集古館、そして個人のご所蔵家のご協力を得て、歌仙絵の白眉たる佐竹本(さたけぼん)三十六歌仙絵をはじめ、様々なバリエーションの歌仙絵をご紹介します。豊穣かつ個性豊かな中世歌仙絵の世界をお楽しみください。