東洋館 8室
2017年1月2日(月) ~ 2017年2月26日(日)
明時代に文人として活躍した董其昌(とうきしょう、1555~1636)は、高級官僚として官途を歩むかたわら、書画に妙腕を発揮しました。書ははじめ唐の顔真卿(がんしんけい)を学び、やがて王羲之(おうぎし)ら魏晋の書に遡ります。さらに当時の形式化した書を否定して、平淡な書風を理想としながら、そこに躍動感あふれる連綿趣味(れんめんしゅみ)を盛り込みました。画は元末の四大家から董源(とうげん)に遡り、宋や元の諸家の作風を広く渉猟して、文人画の伝統を継承しつつ、一方では急進的な描法によって奇想派の先駆けとなる作例も残しています。
董其昌は書画の理論や鑑識においても、卓越した見識を持っていました。『画禅室随筆』は、董其昌の書画に対する深い理解と理念を示すものとして知られています。
明王朝から清王朝への移行は、単なる政権交代ではなく、漢民族が異民族である満州族に覇権を奪われた歴史上の一大事でもありました。董其昌によって提唱された書画の理念は、まさに激動の時代であった明末から清初にかけた書画にも濃厚に反映されました。連綿趣味は、当時の人々の鬱勃たる心情を吐露する恰好の場となったのです。清の康熙帝(こうきてい)と乾隆帝(けんりゅうてい)が董其昌の書画を愛好したことで、その後300年に及ぶ清朝においても董其昌は大きな影響を与え続けます。
今年度は、董其昌の没後380年にあたります。台東区立書道博物館と同一テーマを取り上げる連携企画第14弾では、後世に大きな影響を与えた董其昌に焦点をあてながら、そのあとさきに活躍した人々の書画を取り上げます。両館の展示を通して、魅力あふれる董其昌ワールドをお楽しみください。