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未来の国宝―東京国立博物館 書画の逸品―

  • 『山水図屏風(部分) 呉春筆 江戸時代・18世紀』の画像

    山水図屏風(部分) 呉春筆 江戸時代・18世紀

    本館 2室
    2022年8月30日(火) ~ 2022年9月25日(日)

    東京国立博物館は、令和4年(2022)に創立150年を迎えました。この150年の歴史のなかで収集された文化財のなかには、国指定の国宝や重要文化財となっていなくとも素晴らしい作品が数多く収蔵されています。
    「150年後、もしくはその先の未来、この国宝室にはどのような作品が展示されているのだろう」。
    こういった問いかけから、今年度は「未来の国宝―東京国立博物館 書画の逸品―」というテーマで展示を行なうことにしました。私たち研究員が選び抜いたイチ押しの作品を「未来の国宝」と銘打って、年間を通じてご紹介していくという試みです。
    数万件に及ぶ絵画、書跡、歴史資料のなかから選び抜いた、東京国立博物館コレクションの「逸品」をどうぞご堪能下さい。

    年間の展示予定

     

    山水図屏風
    呉春筆
    江戸時代・18世紀

    呉春(ごしゅん、1752~1811)は江戸時代に大坂や京都で活躍した画家です。与謝蕪村(よさぶそん、1716~83)に俳諧(はいかい)と絵画を学び、蕪村の没後は写生派の祖として知られる円山応挙(まるやまおうきょ、1733~95)に師事し、後に京都画檀を代表する四条派を確立しました。

    この屏風は、呉春が30代の頃、現在の大阪府池田市に在住し、蕪村から学び得たことを咀嚼(そしゃく)しつつ、自らの画風を確立していこうとする時期(池田時代)に描いたものと考えられます。両隻には高士(こうし)や農夫が山間を歩み行く風景が、細く柔らかな線とリズミカルな墨点、淡い色彩によって描かれています。一隻ずつでも鑑賞できる独立性の強い画面構成も特徴です。

    特に注目されるのは、この屏風が滑らかで光沢のある絖(ぬめ、絹織物の一種)に描かれている点です。絖は師である蕪村も好んだ高級な素材で、光を反射して淡く輝く特質があります。俳諧もよくした呉春は光に対しても鋭敏な感覚を持っていました。絖の質感を活かし、柔らかな光に包まれた澄んだ秋の情景を見事に描き出した本作は、呉春の魅力を今に伝える名品です。絖と墨が織りなす光の世界をぜひご覧ください。

主な出品作品

*所蔵の表記の無いものは、当館蔵品です。
山水図屏風 呉春筆 江戸時代・18世紀