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日本美術のとびら 四季

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    本館 特別3室
    2023年1月2日(月・休) ~ 2023年3月12日(日)

    「とびら」をあけて、日本の美術を感じる体験展示。
    「とびら」のむこうに広がる展示室でもっと文化財が身近になるよう、今の私たちにも身近な四季をテーマに、東京国立博物館が誇る4つの国宝、「花下遊楽図屏風」「納涼図屏風」「観楓図屏風」「松林図屏風」の高精細複製品にプロジェクションマッピングを行ないます。屏風を見て、その中を歩き、描かれた四季の風景を感じる鑑賞体験によって、人から人へ受け継がれてきた文化財のすばらしさを体感できます。

展示のみどころ

春 花下遊楽図屛風

花下遊楽図屛風は、江戸時代のはじめ頃のお花見の様子を描いた屏風です。踊っているのは、当時の最新のファッションに身を包んだ女性たち。刀を腰にさしているのは男装の一団です。今の歌舞伎のもととなった、当時流行の阿国歌舞伎の伊達姿を写しているのでしょう。自然を愛で慈しみ、春を謳歌する日本人の心を見事にとらえ、現代に生きる私たちも心が踊り、歌いたくなるような作品です。
映像では、桜と海棠が咲きほこるなか、着飾った女性たちの宴が催されるうららかなシーンが蘇ります。400年の時を超え、貴人たちの花の宴に迷い込む、夢のひとときを体験してください。

(注)原本は大正12年(1923)の関東大震災の時に、右の屏風の中央部分が失われ、現在は無地の紙を補って屏風に仕立てられています。ここで展示している高精細複製品は、完全な姿を唯一伝えるガラス乾板の画像をもとに失われた部分を復元しています。

夏 納涼図屛風

納涼図屛風は、夕顔棚の軒端の下で満月を眺める三人のもとに涼やかな風があたる、普段の人々の暮らしの中の一瞬の風景が描かれています。月が浮かぶ空は薄暗く、まもなく夜を迎えるのでしょう。空に浮かぶ満月や実を結んだ夕顔棚など、夏の終わりから秋になる時期を感じることができる作品です。
映像では夜を迎える風景が映し出されます。月の満ち欠けとともに描かれた情景を見てみると、私たちのごく身近にある平穏な暮らしに見えてくるかもしれません。みなさんの記憶の中にある、風や光、空気、湿度など肌で感じるものを思い浮かべながら、ぜひお楽しみください。

秋 観楓図屏風

観楓図屛風は、京都洛北の高雄にある清滝川のほとりで、色づいた紅葉を楽しむ人々を描いた屏風です。橋のたもとの僧を中央に、子供連れの女性たちが紅葉をめでている様子、笛を吹いたり、語らいながら歩く人々の様子、輪になった男性たちが舞を舞う姿など、秋から冬に移り変わる頃の自然を楽しむ室町時代の人々の姿が描かれ、今を生きる私たちも色あざやかな秋を愛でたくなるような作品です。
映像では、紅葉が風にゆれ、雁がはばたき、雪化粧の愛宕山を背に白鷺が舞い降りる、そんな冬への移り変わりの中で、紅葉と宴を楽しむ人々の姿を見ることができます。ぜひ、そんな風景を散策する体験をお楽しみください。

冬 松林図屛風

松林図屛風は晩冬の松林が描かれた作品で、日本の水墨画の最高傑作とたたえられています。松は勢いのある筆の動きと墨の濃淡を駆使して画面に大きく描かれ、霞の間から松林が見え隠れする様子や、冷たく湿った大気など、その場面の雰囲気が表現されています。
映像では晩冬の松林の一日が映し出されます。朝もやの中から松林が浮かび上がり、陽の光によって松の色が変化し、雪が降り積もり、夜を迎えます。屏風に映し出される映像に心を寄せると、周りに広がる風景とともに波の音が聞こえ、海辺の湿った空気や松の香り、鳥たちが木々の間を飛び交う景色などが見えてくるかもしれません。