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未来の国宝―東京国立博物館 書画の逸品―

  • 『形見の直垂(虫干)川村清雄筆 明治32~44年(1899~1911)』の画像

    形見の直垂(虫干)
    川村清雄筆 明治32~44年(1899~1911)

    本館 2室
    2022年11月22日(火) ~ 2022年12月25日(日)

    東京国立博物館は、令和4年(2022)に創立150年を迎えました。この150年の歴史のなかで収集された文化財のなかには、国指定の国宝や重要文化財となっていなくとも素晴らしい作品が数多く収蔵されています。
    「150年後、もしくはその先の未来、この国宝室にはどのような作品が展示されているのだろう」。
    こういった問いかけから、今年度は「未来の国宝―東京国立博物館 書画の逸品―」というテーマで展示を行なうことにしました。私たち研究員が選び抜いたイチ押しの作品を「未来の国宝」と銘打って、年間を通じてご紹介していくという試みです。
    数万件に及ぶ絵画、書跡、歴史資料のなかから選び抜いた、東京国立博物館コレクションの「逸品」をどうぞご堪能下さい。

     

    年間の展示予定

     

     

    形見の直垂(虫干)
    川村清雄筆
    明治32~44年(1899~1911)

     

    着物姿の少女が左手をのばし、何かに思いを募らせるかように、白い衣装をみつめています。この作品は明治時代における油彩画の先駆者のひとり、川村清雄(1852 ~ 1934)が恩人ともいえる勝海舟(1823 ~ 99)の死を悼み、亡き恩人に捧げられた万感の思いをこめた絵です。
    少女がまとう白い直垂は、勝の葬儀の際に棺を運んだ川村自身が着たものです。右の小さな棺の上にのった洋装の石膏胸像は勝の肖像写真をもとにしたものといわれていています。和蘭絨毯や勝の朱の式服(礼服)、能装束、古代ローマの火皿などといった勝の遺愛の品々が、花を添えられて並べられています。
    川村は旗本の家に生まれ、明治維新後早くに渡欧してイタリアやフランスで本格的に油彩画を学び、西洋の伝統的な技法を身につけました。緻密なマティエールを表現する高度な画力を持つに至った川村は、帰国後には絹や金銀箔など、日本画の材料と手法を積極的に取り入れていきました。この作品のなかでも、美しい色彩によって、和洋の衣装や道具が対照するように構成されて、西洋の絵画である油彩画に和の趣が強く描き出されています。作品は昭和23年(1948)の「切手趣味週間」シリーズで切手のデザインにとりあげられて以来、抜群の知名度を誇るようになりました。

     

主な出品作品

*所蔵の表記の無いものは、当館蔵品です。
形見の直垂(虫干) 川村清雄筆 明治32~44年(1899~1911)