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馮子振(1257-)は,元王朝に仕え官途を歩んだが,その一方で禅学にも精通し,中峰明本,古林清茂ら当時の僧侶との交渉も深かった。この墨跡は,中峰明本の会下で修業を積んでいた無隠元晦のために,三首の七言絶句を揮毫して贈ったものである。元晦は延慶元年(1308)に入元し,泰定3年(1326)に帰朝している。本幅もおそらくその在元期間中に揮毫されたのであろう。このほかにも無隠元晦に与えた語が伝えられており,馮子振がいかに無隠を重んじていたかがうかがわれる。